この記事のポイント
- 35歳でデビューし、2年で22勝。35歳以上でメジャーに来た日本人で最多
- 今季は被本塁打・与四球・被打率が前年と同じなのに、防御率は4.64→5.37
- フォーシームとシンカーの二塁打・三塁打が7本から28本に
今季の菅野智之は、被本塁打も与四球も被打率も前年と同じだった。それでも防御率は4.64から5.37に上がった。メジャー2年目を終えたロッキーズの右腕は、1年契約が切れて今オフにフリーエージェント(FA)となる。
今季は29試合に先発し、12勝12敗。勝ち星はチーム最多だった。154回1/3で浴びた本塁打33本は、MLB4位だった。最後の登板は9月25日(日本時間26日)のホワイトソックス戦で、村上宗隆に2本塁打を浴びた。

35歳でデビュー、2年で22勝
菅野は2025年、35歳でオリオールズからメジャーデビューし、2年で22勝を挙げた。日本人投手の最初の2年間では9位だが、35歳以上でメジャーに来た日本人投手に限れば最も多く、2位の高橋尚成に8勝差をつけた。一方、2年で浴びた本塁打66本は、日本人投手の最初の2年間で最多。
本塁打も四球も同じ、増えたのは二塁打
2年間を並べると、不思議な形が見えてくる。
| 2025年 | 2026年 | |
|---|---|---|
| 勝敗 | 10勝10敗 | 12勝12敗 |
| 防御率 | 4.64 | 5.37 |
| 投球回 | 157回 | 154回1/3 |
| 被打率 | .276 | .276 |
| 与四球 | 36 | 36 |
| 被本塁打 | 33 | 33 |
| 被二塁打 | 21 | 39 |
| 被三塁打 | 3 | 6 |
被打率も、与四球も、被本塁打も、前年と同じ数字が並んだ。安打はむしろ173本から167本に減っている。それでも自責点は81から92に増え、防御率は0.73上がった。
8月以降に崩れた時期は、走者を置いての被弾が目立っていた(9月の記事)。ただ、1年を通して前年と比べると、増えたのは本塁打以外の長打だった。二塁打は21本から39本へ、ほぼ倍になった。
三塁打も3本から6本。合わせて24本が45本になり、単打は116本から89本に減った。安打は増えていないのに、1本で進まれる塁が増えた。二塁打39本はMLB6位タイ。1打数あたりに許した塁打の多さを示す被長打率も、.478から.523に上がった。
本拠地のクアーズ・フィールドは標高が高く、外野も広い。二塁打が増えた理由として、まず思いつくのは球場だろう。だが今季の二塁打は、本拠地で20本、敵地で19本。ほとんど差がない。オリオールズ時代の2025年も11本と10本だった。
二塁打が増えたのは、終盤だけの話でもない。4月に8本、5月に9本、6月に12本と、シーズン前半から多かった。
打たれていたのはフォーシームとシンカー
増えた長打をたどると、2つの球種に行き着く。フォーシームとシンカーから浴びた二塁打と三塁打は、2025年の7本から今季は28本。増えた21本は、二塁打と三塁打の増加分とちょうど同じだった。
その2球種は、強く打ち返されてもいた。打球速度152.9キロ以上の強い打球の割合は、フォーシームが49.4%から60.2%へ。フォーシームの打球の平均速度も148.9キロから154.4キロに上がっている。
今季いちばん強く打たれた長打は、5月22日の敵地ダイヤモンドバックス戦だった。3回2死、2ボール2ストライク。ゾーンの低めに投じた149.0キロのシンカーを、ケテル・マルテに打球速度187.8キロで右翼へはじき返された。
では、速球が衰えたのか。フォーシームの平均球速は149.3キロから149.0キロで、ほとんど変わっていない。変わったのは、投げた高さと球の質だった。
フォーシームが本塁ベース上を通った高さは、平均90.8センチから79.2センチへ、11.6センチ下がった。ベルトの高さ(約90センチ)より上に投げた割合も、47.8%から29.3%に減っている。
もう1つは縦の変化量だ。Statcastは1球ごとに、重力だけで落ちる場合を基準に、そこからどれだけ浮き上がったかを計測している。値が大きいほど落ちにくい。菅野のフォーシームは42.7センチから37.2センチへ、5.5センチ小さくなった。
以前より低い位置に、以前より落ちる球が来る。高めの速球は、打者のバットの上を通りやすい。低く、浮き上がりの小さい速球は、打者がバットを出しやすい高さに入ってくるため、芯で捉えられやすくなったのではないか。実際、ライナーが二塁打か三塁打になった数は、14本から33本に増えた。
ただし、これは推論である。低めを狙った結果なのか、狙いより下に外れたのかは、データからは分からない。
「来年以降の野球人生に」
今季の契約は、2月10日に結んだ1年510万ドル(約8億円)だった。MLB.comは、ロッキーズで12勝を挙げた投手として球団史上最年長だと伝えている。菅野は10月11日に37歳になる。
最終登板のあと、菅野は「結果ほど内容は悪くなかった」と振り返った。そのうえで「おそらくロッキーズよりも厳しい環境にある球場はない」と話し、1年間の経験を「来年以降の自分の野球人生につなげられると思う」と語った(スポニチアネックス、9月26日配信)。
MLB.comは同じ試合の記事で、菅野が今季「あと4年投げたい」と話していたことにも触れている。ロッキーズ専門サイトのパープル・ロウは「おそらく、これがロッキーズでの最後の先発登板となる」と書いた(THE DIGEST、9月27日配信)。
FA選手の交渉は、ワールドシリーズが終わると本格的に始まる。どこで投げるにしても、来季まず見るべきは被本塁打ではなく二塁打の数だ。フォーシームを投げる高さが前年の水準に戻るかどうかが、その手がかりになる。
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この記事の数字について(出典・集計方法)
- 成績は MLB Stats API のレギュラーシーズン(
gameType=R)の数字(10月9日取得)。投球回はMLB表記の小数(154.1)ではなく、分数(154回1/3)で書いている。 - 被本塁打のMLB順位・被二塁打のMLB順位・2年間の被本塁打の合計は、2025年と2026年に登板した全投手(2025年873人、2026年868人)の成績から数えた。シーズン途中に移籍した投手は合算の1行で数えている。被二塁打は今季40本以上が5人、39本が菅野を含む3人。
- 日本人投手の比較は、当サイトの日本人選手一覧(出生国が日本の選手)に載る投手について、投球の年度別成績(
yearByYear)を合算した。「最初の2年間」は投手として登板した最初の2シーズン。勝利数は別の経路(stats=season)でも確認した。 - 「35歳以上でメジャーに来た」はメジャー初登板の日の年齢が35歳以上の投手(菅野、高橋尚成、高津臣吾、建山義紀、斎藤隆、小宮山悟、藪恵壹、桑田真澄、高橋建)。最初の2年間の勝利数は菅野22、高橋尚成14、高津8、斎藤8の順。「35歳以上で迎えたシーズン」は、その年の6月30日時点の年齢で数えた。
- 本拠地・敵地別の被二塁打は Stats API の
homeAndAwayによる。2026年は本拠地20本・敵地19本、2025年は本拠地11本・敵地10本。 - 球種別・月別・打球の種類別の数字、球速・高さ・変化量は、Baseball Savant の1球データ(
statcast_search、hfGT=R)を当サイトが集計した。球種の区分は Statcast の判定による。フォーシームは2025年485球・2026年518球、シンカーは412球・478球。 - 「強い打球」は打球速度152.9キロ(95マイル)以上の打球。打球の対象は、犠打を除くインプレーの打球。フォーシームの強い打球の割合は49.4%(40/81)から60.2%(65/108)、シンカーは47.3%(43/91)から52.5%(62/118)。
- 「ライナー」は Statcast の打球分類(line_drive)による。ライナーの二塁打・三塁打は2025年が14本(127打球)、2026年が33本(137打球)。
- 本塁ベース上の高さは Statcast の
plate_z、縦の変化量はpfx_z(重力だけで落ちた場合を基準にした浮き上がり量)の平均。ベルトの高さより上(plate_zが3フィート=91.4センチ以上)に投げた割合は、47.8%(232/485)から29.3%(152/518)。リリースの高さは182.5センチから180.4センチで、2.1センチ下がっている。シンカーの縦の変化量も30.5センチから27.6センチに小さくなった。 - 「低く、浮き上がりの小さいフォーシームが捉えられやすくなった」という読み方は当サイトの推論で、打者の狙いや投手の意図はデータからは特定できない。
- 球速・打球速度はマイルからキロに、高さ・変化量・距離はフィートからセンチに換算した(1マイル=1.609344キロ、1フィート=30.48センチ)。
- 契約は AP通信(2026年2月11日、KKCO 11 News掲載) による。円は三菱UFJ銀行の対顧客電信仲値で、契約日の2026年2月10日の1ドル=156.17円で換算した。
- 菅野の発言は スポニチアネックス(2026年9月26日配信)、球団史上最年長の12勝と「あと4年」の話は MLB.com(2026年9月25日・日本時間26日、トーマス・ハーディング記者)、パープル・ロウの記述は THE DIGEST(2026年9月27日配信) の訳による。いずれも当サイトが取材したものではない。発言は原文の一部を引用した。
数字はすべて MLB Stats API ほかの実データです。データの出典と方針