この記事のポイント
- 3年で35勝・防御率3.45。被本塁打93本は日本人の最初の3年で最多
- 今季、フォーシームからの被弾は24本から17本に減った
- それ以外の球からは7本から18本へ。増えたのはボール先行の場面だった
今オフにフリーエージェント(FA)となるカブスの今永昇太は、メジャー3年間で35勝、防御率3.45。一方で被本塁打93本は、日本人投手のメジャー最初の3年で最多だ。今季、増えたのは速球以外の球からの一発だった。
今季は32試合に先発し、11勝10敗、防御率3.77。174回1/3で浴びた本塁打は35本で、フィリーズのアーロン・ノラの37本に次ぎ、アスレチックスのジェフリー・スプリングスと並ぶMLB2位タイだった。チームは9月30日(日本時間10月1日)、ワイルドカードシリーズでパドレスに2連敗して敗退し、今永は登板しないまま今季を終えた。

9月20日の時点では34本で、ノラと並ぶMLB最多タイだった。その後ノラが3本を上積みし、今永は最後の登板で1本を浴びて35本で終えた。日本人投手のシーズン被本塁打では、2017年の田中将大と並ぶ2位タイ。上には2019年の菊池雄星の36本しかない。
その35本目は、9月27日の敵地レッドソックス戦だった。1回だけ投げたこの試合で、2ボールからの146.1キロのフォーシームをアドリー・ラッチマンに左翼席へ運ばれた。打球速度166.1キロ、飛距離122.5メートル。
3年で35勝、被本塁打93本は日本人最多
カブスでの3年間は、次のように推移した。
| 年 | 勝敗 | 防御率 | 投球回 | 奪三振の割合 | 被本塁打 |
|---|---|---|---|---|---|
| 2024 | 15勝3敗 | 2.91 | 173回1/3 | 25.1% | 27 |
| 2025 | 9勝8敗 | 3.73 | 144回2/3 | 20.6% | 31 |
| 2026 | 11勝10敗 | 3.77 | 174回1/3 | 24.6% | 35 |
奪三振の割合は、対戦した打者のうち何人を三振に取ったかを示す数字。2年目に20.6%まで落ちたが、今季は24.6%と1年目に近い水準まで戻した。それでも被本塁打は、27本、31本、35本と毎年増えている。
3年間を合わせると35勝21敗、防御率3.45。日本人投手のメジャー最初の3年間で比べると、投球回492回1/3は6位、奪三振465は5位、35勝は8位に入る。400回以上を投げた11人のうち、防御率は6番目だった。
一方で、被本塁打93本は日本人で最も多い。2位は1998〜2000年の吉井理人の79本で、14本の差がある。
フォーシームからの被弾は減っていた
一発が増えたとき、まず疑われるのは速球の衰えだ。だが今永のフォーシームは、平均球速が147.5キロ、146.2キロ、147.4キロと3年でほとんど変わっていない。
Statcastは1球ごとに「縦の変化量」も計測している。重力だけで落ちる場合を基準に、そこからどれだけ浮き上がったかを示す数字で、値が大きいほど落ちにくい。今永のフォーシームは46.5センチ、45.7センチ、45.0センチ。わずかに小さくなったが、大きな変化ではない。
実際、フォーシームから浴びた本塁打は22本、24本、17本で、今季は前年より7本減った。打球になったときに本塁打になった割合も、前年の11.5%から8.9%に下がっている。
増えたのは、フォーシーム以外の球からの一発だった。5本、7本ときて、今季は18本。内訳はスプリット9本、スイーパー6本、シンカー3本。打球になったときに本塁打になった割合も、2.2%、3.3%ときて、今季は6.1%に上がった。
とくに目立つのが左打者だ。左打者に浴びた本塁打は5本、4本ときて、今季は11本。前の2年はすべてフォーシームだったが、今季はスイーパーが5本、シンカーが2本を占めた。左打者へのスイーパーは、前の2年は被本塁打0だった。
ボールが先行した場面で、投げる球が変わった
変わったのは、投球の組み立てだった。全投球に占めるフォーシームの割合は、51.9%、48.7%ときて、今季は40.1%まで下がった。いちばん大きく減ったのが、ボールが先行したカウントだった。
1ボール0ストライクや2ボール1ストライクのように、ボールが先行したカウントで投げた球のうち、フォーシーム以外は2024年が34.5%、2025年が38.3%。今季は54.9%と、初めて半分を超えた。
その球から浴びた本塁打は、1本、3本、8本と増えた。今季フォーシーム以外から浴びた18本のうち、8本がボール先行の場面だった。一方、その球をストライクゾーンに入れた割合は53.3%、56.3%、55.4%で、ほとんど変わっていない。つまり、制球が乱れたわけではない。
ボールが先行すれば、投手はストライクを取りにいく必要がある。以前の今永は、その場面で6割以上をフォーシームに任せていた。今季はスプリットやスイーパーでストライクを取りにいく場面が増え、その球を捉えられた、と数字からは読める。
ただし、これは推論である。打者がその球を待っていたかどうかは、データからは分からない。打球全体の強さや角度については、9月の記事で詳しく見ている。
QOは2度出せない 今回は補償なしのFA
今永がFAを迎えるのは、実は2度目になる。昨オフ、カブスも今永も契約を延ばす権利を使わず、いったんFAになった。そこでカブスが出したクオリファイング・オファー(QO)を受け入れ、1年契約で残った。
QOは、FAになる選手に元の球団が出す1年契約の提示で、今季の額は2202万5000ドル(約34億円)だった。選手が断って他球団と契約すると、元の球団はドラフト指名権の補償を受け取る。カブスのカーター・ホーキンスGMは、今永が受け入れる前の週に、QOを出したことを「迷う余地はなかった」と話していた。
ただし、QOは同じ選手に1度しか出せない。今永は今回、QOの対象にならず、獲得する球団が指名権を手放す必要もない。
市場の評価は控えめだ。米サイトのMLBトレードルーマーズは9月17日のFA格付けで、上位10人に今永を入れず、名前だけを挙げた17人の1人とした。同じカブスの鈴木誠也は5位だった。
カブスの地元サイト、ブリーチャー・ネイションは10月5日の記事で、3年間の働きは払った額に「十分に見合った」と評価した。そのうえで被本塁打の多さを挙げ、カブスは先発の予算をほかの投手に回すのではないかと見ている。日本球界に戻る可能性にも触れた。
FA選手の交渉は、ワールドシリーズが終わると本格的に始まる。どの球団に移るにしても、来季まず見るべきは、ボールが先行したときに何を投げるか。そこでフォーシームが戻るかどうかが、被本塁打の数を左右しそうだ。
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- 選手ページ:今永昇太
この記事の数字について(出典・集計方法)
- 成績は MLB Stats API のレギュラーシーズン(
gameType=R)の数字(10月8日取得)。ポストシーズンはgameType=F・D。投球回はMLB表記の小数(174.1)ではなく、分数(174回1/3)で書いている。 - 奪三振の割合は、奪三振÷対戦打者数。2024年174/694、2025年117/567、2026年174/706。
- 日本人投手の比較は、MLB Stats API で1964〜2026年に在籍した出生国が日本の選手を抽出し、投球の年度別成績(
yearByYear)を合算した。シーズン途中の移籍は合算行を使い、二重に数えていない。「最初の3年間」は投手として登板した最初の3シーズンで、3シーズン以上登板した32人で比べた。防御率は、その3年間で400回以上を投げた11人で比べた。 - シーズン被本塁打の4位以下は、ダルビッシュ有(2019年)と菅野智之(2025年・2026年)の33本。9月20日時点の数字は、9月21日公開の記事で使ったもの。
- 球種別・左右別・カウント別の数字は、Baseball Savant の1球データ(
statcast_search、hfGT=R)を当サイトが集計した。球種の区分は Statcast の判定による(FF=フォーシーム、FS=スプリット、ST=スイーパー、SI=シンカー)。 - 「打球になったときに本塁打になった割合」は、本塁打÷インプレーの打球数(犠打を除く)。フォーシームは2025年24/208、2026年17/192。フォーシーム以外は2024年5/224、2026年18/295。
- 「ボールが先行したカウント」は、ボールの数がストライクの数より多いカウント(1-0、2-0、3-0、2-1、3-1、3-2の6つ)。そこで投げたフォーシーム以外の球は、2024年195/566、2025年197/515、2026年401/730。ストライクゾーンの内外は Statcast のゾーン区分(1〜9がゾーン内)による。
- 「ボール先行の場面でスプリットやスイーパーを捉えられた」という読み方は当サイトの推論で、打者の狙いや投手の意図はデータからは特定できない。
- 球速と打球速度はマイルから、縦の変化量はフィートから、飛距離はフィートからメートル法に換算した(1マイル=1.609344キロ、1フィート=30.48センチ)。
- 昨オフの経緯は、カブスが2026〜28年の3年5775万ドルの球団側の選択権を使わず、今永が2026年の1年1525万ドルの選手側の選択権を使わなかったもの。QOの額と経緯、ホーキンスGMの発言(原文は「It felt like a no-brainer for us」)は MLB.com(2025年11月18日、ジョーダン・バスティアン記者)による。同記事は発言を「先週」のものとしており、場所は書かれていない。QOを同じ選手に1度しか出せない規定は、同記事とCBSシカゴ(2025年11月18日)による。円は三菱UFJ銀行の対顧客電信仲値で、受諾した2025年11月18日の1ドル=155.34円で換算した。
- FA格付けは MLBトレードルーマーズの 2026-27 MLB Free Agent Power Rankings: Final Check-In(2026年9月17日、スティーブ・アダムズ記者)、カブスの見通しはブリーチャー・ネイションのFor the Second Offseason in a Row, There Is a Shota Imanaga Question(2026年10月5日、ブレット・テイラー記者)による。いずれも当サイトが取材したものではない。
数字はすべて MLB Stats API ほかの実データです。データの出典と方針