STATSBaseball ArchivesBASEBALL STATS ANALYSIS
← ニュース一覧
ニュース2026-09-21今永昇太カブス被本塁打バレルStatcast打球角度指標の読み方MLB

今永昇太の被弾34本はMLB最多 強い当たりは少ないのに角度だけ揃った

今永昇太の被弾34本はMLB最多 強い当たりは少ないのに角度だけ揃った

今季の被本塁打34本はアーロン・ノラと並ぶMLB最多タイ。日本人投手のシーズン被本塁打としても、2019年の菊池雄星36本、2017年の田中将大35本に次ぐ歴代3位に当たる。ところが与四球は9イニングあたり1.98個でリーグ上位、WHIP1.10、防御率3.80と、数字は打ち込まれている投手のものに見えない。1球ごとの計測値で分けると、強く打たれた打球の割合は100回以上を投げた137投手のうち102位で下位だった。それでいて、その強い当たりが本塁打の角度に乗った割合は7位。打者は今永から強い当たりを増やしたのではなく、強く打てた一打を上げていた。

Baseball Archives 編集部2026-09-21データ出典 MLB Stats API

打ち込まれている投手の数字には見えなかった――。カブスの今永昇太は9月16日(日本時間17日)の本拠地ブレーブス戦に先発し、6回100球を4安打1失点、8奪三振無四球で投げ切った。6回以上を自責3以下で抑える「クオリティースタート」は、9月の3登板すべてで並べた。今季は30先発168回1/3で被本塁打34本、アーロン・ノラと並ぶMLB最多タイ。ノラも168回1/3で、本数だけでなくイニングまで同じだった。ただ、1球ごとの計測値をたどると、34本の出どころは打球の速さではなかった。

被本塁打34本は、日本人投手が1シーズンに浴びた数としても歴代3位だった。上にいるのは2019年の菊池雄星の36本と、2017年の田中将大の35本だけ。

ところが、被弾の数だけが並んでいた。

投手 被本塁打 投球回 与四球率 WHIP 防御率
2019 菊池雄星 36 161回2/3 2.78 1.52 5.46
2017 田中将大 35 178回1/3 2.07 1.24 4.74
2026 今永昇太 34 168回1/3 1.98 1.10 3.80

防御率は菊池と1.66、田中と0.94ひらいた。分けたのは走者の数だった。今永の与四球は168回1/3で37個、9イニングあたりに直した「与四球率」は1.98個で、50回以上を投げたMLB319投手のうち少ないほうから21番目。同じ34本を浴びたノラは58個、9イニングあたり3.10個だった。そして本塁打が大きな失点に化けるかどうかは、その塁上に何人いるか次第だった。

実際、34本のうち24本は走者なしの場面から飛び、一塁のみが3本、得点圏に走者を置いて打たれたのは7本だけ。7割が“ソロ”という内訳は、今季MLBで飛んだ本塁打5341本のうちソロが57.8パーセントだったのと比べても偏っている。渡米からの3年では、被弾は27本、31本、34本と増えた。ただし9イニングあたりに直した「被本塁打率」は1.40本、1.93本、1.82本で、跳ね上がったのは2年目であり、今季は前年からわずかに下がっている。今季の34本は率が上がった結果ではなく、故障で144回2/3にとどまった前年から、23回2/3多く投げた分だった。

強い当たりは102位、その一打がバレルになる割合は7位

もっとも、“ソロ”の多さは失点を抑えた理由であって、一発が多い理由の説明にはならない。だが打球の中身を見ると、数字が2つに割れた。強く打たれた打球の割合、いわゆる「ハードヒット率」は36.3パーセントで、100回以上を投げた137投手の中央値38.9パーセントを下回る102位。平均打球速度も94位で、強い当たりを浴びている投手ではない。

ところが、割れたのは角度のほうだった。「打球角度」の平均は17.8度で、137投手の中央値13.9度を大きく上回る23位。Statcastには、速さと角度の両方がそろって初めて付く「バレル」という判定がある。この指標が数えるのは「本塁打になりやすい当たり」だけで、時速158キロ(98マイル)以上の速さと、それに見合う角度の両方が要った。角度だけでは付かない。今永のバレル率9.7パーセントは中央値8.0パーセントを超える25位。強い当たりの総量は下から数えたほうが早いのに、その数少ない強い当たりが、そろって本塁打の角度に乗っていた。

割合で見るとはっきりした。ハードヒットと判定された173本のうち、バレルにまで達したのは46本で26.6パーセント。137投手の中央値は20.4パーセントで、今永は高いほうから7番目だった。打者は今永から強い当たりを増やしたのではない。強く打てた一打を、上げていた。

その一打が、平均よりよく柵を越えた。今季与えたバレル46本のうち、スタンドまで届いたのは27本。58.7パーセントという割合は、バレルを15本以上与えた135投手の中央値48.4パーセントを上回り、高いほうから16番目だった。同じ日本人で被弾4位の菅野智之は26本で44.1パーセント、95番目だった。ただし被弾34本のうちバレル判定は、その27本だけ。残る7本は、バレルに達しない当たりから出ている。柵を越えた当たりは、バレルの内と外の両方から来ていた。もっとも46本という母数では、数本の差で順位は大きく動く。

本拠地1.27本、敵地1.23本 残ったのは球の高さ

真っ先に疑われるのは本拠地リグレー・フィールドの風だが、本拠地18登板1650球で21本、ビジター12登板1058球で13本。100球あたりでは1.27本と1.23本、打球あたりでは7.0パーセントと7.4パーセント。どちらの分母で割っても差は小さく、向きも定まらない。1試合3本以上を浴びた6試合も、本拠地と敵地でちょうど3ずつに割れた。

ただし、打球そのものが球場に左右されにくかったわけではない。中日スポーツ(9月17日)によれば、Statcastが球場を補正して算出した推定被弾は28.1本で、実際の34本はそれを5.9本上回る。同記事はこの差をMLBで3番目の大きさとしたうえで、全30球場で本塁打になる「文句なし」の当たりは29.4パーセントだったと伝えている。7割以上は、球場によっては越えていなかった計算だった。リグレーだから多いのではない。越えるか越えないかの当たりが多く、それが越えていた。

代わりに手掛かりが出てきたのは、打たれた球の高さだった。スプリットの被弾9本は平均61.5センチの高さで、この球種の平均54.1センチより7.4センチ上ずっている。スイーパーの6本も72.8センチで、平均の61.6センチより11.2センチ高い。落ちる球が抜けたところを叩かれている形だった。

速球のほうは逆で、被弾16本の平均は87.4センチと、フォーシーム全体の平均90.9センチよりむしろ低かった。ただ、この87.4センチは打たれている高さを指していない。高さ別に割ると、被弾は両端に寄っていた。膝の上から太ももにあたる61〜79センチの240球からは7本、100球あたり2.92本。98センチより上の406球からも7本で1.72本。ところが、その間の79〜98センチは347球で2本、0.58本しかなかった。61センチより低い102球からは1本も出ていない。平均87.4センチは、上と下に割れた当たりの真ん中にすぎなかった。

8月30日の3被弾と、9月の18イニング

さらに、その34本は登板にも均等に散っていない。今季30登板のうち、被弾ゼロで終えた試合が11あった。一方で1試合3本以上を浴びた登板が6度あり、そこから出た本塁打は19本。被弾34本の半分以上が、30登板のうちわずか6試合に集まった。この6試合を“崩れた日”と呼ぶなら、残る24登板のうち22試合は被弾1本以下で終えている。3被弾以上の試合が6度というのは、MLBの左腕として単一シーズン最多だとマイナビニュース(8月31日)が報じている。

その6度目が、8月30日(日本時間31日)のレッズ戦だった。5回8安打6失点、3被弾。クレイグ・カウンセル監督は試合後に「1試合で3本はさすがに多い」と語ったと、同記事は伝えた。監督が試合後にわざわざ本数へ触れたこの日が、結果として6度目にして最後になっている。今永はここから9月の3登板で18イニングを投げ、被弾は1本だけだった。

MLB最多の被弾を抱えていても、現地の評価は低くなかった。9月16日の登板後、地元中継局マーキー・スポーツ・ネットワークのジム・デシェイーズ解説者が今永を擁護している。「シーズンを通すとかなり手堅い出来」と述べたと、中日スポーツ(9月17日)が報じた。同記事によれば、今永の防御率3.80はナ・リーグ13位で、リーグ先発投手の平均4.28より0.48低い。

数字の側も、失点そのものは打球の中身どおりに収まっている。打球の質から期待される防御率、いわゆる「xERA」は3.79で、実際の3.80とほぼ一致した。ずれているのは本塁打の本数のほうだった。推定より5.9本多い一発を、走者を出さない投球が防御率3点台に収めている。

ただ、一発の多さと走者の少なさが同居するのは今季に始まったことではない。昨季も被本塁打率1.93本に対して、与四球率は1.62個だった。しかもその一発は、球場を補正してもなお5.9本多い。数試合のぶれでは片づかない。

“崩れた日”は8月30日を最後に出ていない。8月までは3被弾の試合が6度、9月は3登板で被弾1本。同じ左腕が、2か月で別の投手のように見えている。

次の登板で、この左腕がどちらの顔で出てくるのか――。

カブスに残された試合は6試合。日本人最多の36本まで2本、田中将大の35本まで1本という位置で、球団は168回1/3を投げた左腕に、もう一度ボールを渡すことになった。MLB最多の被弾を抱えたまま、防御率3点台の先発を軸に据えられるかどうか。その判断のほうが、34本という数字より先にカブスへ返ってくる問いだった。

この記事の数字について

関連記事

数字はすべて MLB Stats API ほかの実データです。データの出典と方針
選手データ

今永昇太の成績・年度別・高度指標を見る

開く →

関連・注目のニュース

← ニュース一覧へ戻る