打たれた側に、同じ名前が並んだ。ホワイトソックスの村上宗隆が9月25日(日本時間26日)の本拠地ロッキーズ戦で、先発の菅野智之から1回と7回に本塁打を放った。34号と35号、4打数3安打3打点で、チームは6対1で勝った。MLBで日本人打者が日本人投手から1試合に2本を打ったのは、これが史上2度目だ。ところが1度目に打たれていたのも、菅野だった。
1度目は2025年9月7日。当時オリオールズにいた菅野が、ドジャースの大谷翔平に1回表と3回表で47号と48号を許した。その1年後、リーグも球団も変わった菅野が、今度は別の日本人打者に同じ形で2本を浴びた。“日本人対決”で1試合2本という場面は、150年のMLB史でこの2度しかない。
21本のうち、6本
日本人打者が日本人投手から本塁打を打った例そのものが、そもそも多くない。1876年以降のすべてのシーズンを数えても21本しかない。最初は2004年6月19日、ヤンキースの松井秀喜がドジャースの野茂英雄から打った12号だった。以降はイチローが石井一久と小林雅英から、城島健司が井川慶から、岩村明憲が松坂大輔から、福留孝介が川上憲伸から1本ずつ。2019年以降は大谷が11本を占め、残りを吉田正尚と鈴木誠也、そして今回の村上が分けた。
ところが、その21本を投げた側で数え直すと、最も多いのが菅野の6本。次が菊池雄星の4本で、ほかの11投手はいずれも1本ずつ。菅野がMLBで投げたのは2025年と2026年の2年だけなので、6本はその2年に集中した。
| 日付 | 打者 | 号数 | 球種 | 飛距離 |
|---|---|---|---|---|
| 2025-09-07 | 大谷翔平 | 47号 | シンカー | 125.3m |
| 2025-09-07 | 大谷翔平 | 48号 | フォーシーム | 121.6m |
| 2026-05-27 | 大谷翔平 | 9号 | フォーシーム | 129.2m |
| 2026-08-17 | 大谷翔平 | 28号 | カッター | 130.5m |
| 2026-09-25 | 村上宗隆 | 34号 | スライダー | 117.7m |
| 2026-09-25 | 村上宗隆 | 35号 | シンカー | 125.6m |
菅野が2年で投げた対戦打席は1331。うち日本人打者との対戦は26打席で、全体の2.0%にあたる。ところが浴びた66本のうち6本が日本人から出ており、こちらは9.1%。ただしこの26打席には、相手が5人しかいない。
6本は、2人からしか出ていない
打席あたりに直すと、日本人以外には21.8打席に1本、日本人には4.3打席に1本。5倍の開きだが、26打席で投手の傾向は測れない。内訳を開くと、偏りの正体はもっと単純だった。
大谷が11打席で11打数7安打4本塁打、打率.636。村上が3打席で3打数2安打2本塁打、打率.667。6本はこの2人だけが打っていて、残る3人は12打席で1安打しかない。 鈴木誠也が5打席で0安打、吉田正尚が5打席で1安打、岡本和真が2打席で0安打。日本人だから打たれているのではない。26打席のうち14打席が、大谷と村上の2人で埋まっている。相手の国籍ではなく、誰と当たったかの数字――。
ただし菅野が一発を浴びる頻度は、相手が日本人かどうかとは別のところで決まっている。2025年はオリオールズで157回33本、2026年はロッキーズで154回1/3を投げて33本。9イニングあたりに直すと1.89本と1.92本で、リーグも球場も変わったのにほとんど動いていない。26打席の偏りは、その土台の上に乗った数字だ。
138キロのスライダーと、150キロのシンカー
村上の2本は、打った球がまるで違った。1回、2ボール2ストライクから来た時速138キロのスライダーを右翼へ運んで34号。打球速度166.2キロ、角度37度、飛距離117.7メートル。7回は1ボールから時速150キロのシンカーを左中間へ運んで35号で、打球速度176.1キロ、角度30度、飛距離125.6メートル。遅い変化球と速い直球系を、1試合で両方スタンドに入れた。あいだの4回は、見逃し三振に倒れた。
これで村上は125試合で35本塁打。打率.209、77打点、OPS.834という内訳で、本塁打だけが突出した“いびつな1年”だった。日本人の1年目としては、同期の岡本和真が154試合33本なので、2本リードして最多の位置に戻った。しかも菅野との対戦は、この日が初めて。初対戦の3打席で、2本だった。
一方の菅野は、ロッキーズでの1年目がこれで29登板12勝12敗、防御率5.37。12勝はチーム最多で、先発陣では2位に6勝の差。36歳のメジャー2年目が、メジャーでの自己最多を更新した。そして“日本人対決”の21本のうち、6本が2026年に出ている。150年でたまった数の3割近くが、この1年に集まった――。
この記事の数字について
- 成績は MLB Stats API(レギュラーシーズン=
gameType=R)から取得した、米国時間2026年9月25日終了時点の数字。当該試合は gamePk 824544。 - 日本人打者が日本人投手から打った本塁打21本は、1876年から2026年までの全シーズンについて
sports/1/playersで出生国が日本の選手を抽出し(78人)、3通りの方法で独立に集計して同じ結果を得た。①日本人打者と日本人投手の組み合わせごとにvsPlayerで対戦成績を引く方法、②Baseball Savant の1球データ(2015年以降)で日本人投手が浴びた本塁打の打者を判定する方法、③両者が対戦チームに同席した全試合のplayByPlayを読む方法。③で読んだのは585試合で、実際に対戦が成立したのは357試合だった。 - 出生国が日本でも、在日米軍関係などで日本に生まれ日本で育っていない選手9人は対象から外している。内訳は当サイトの球団別の日本人選手一覧に用いた対応表と同じ。
- 「1試合2本」は、同じ試合で日本人投手から通算2本を打った場合を指す。21本を打者と試合の組み合わせで数え直しても、該当は2025年9月7日と2026年9月25日の2試合だけ。1試合で別々の日本人投手から1本ずつ、という例もない。
- 日本人打者がMLBでプレーするようになったのは2001年以降で、それ以前に日本から渡ったのは投手と、1964年の村上雅則だけ。最初の1本が2004年になったのはそのためで、実際に対戦が起こりうる期間は25年ほどしかない。
- ポストシーズンとオールスターでは、日本人打者が日本人投手から打った本塁打は1本もない。オープン戦では2025年春に大谷が菊池から1本を打っている。
- 対戦成績(大谷11打席、村上3打席など)は
vsPlayerTotalの値で、9月25日の3打席を含む。シーズン別のvsPlayerは反映に数日かかり、直近の対戦が落ちる。 - 「日本人以外には21.8打席に1本」は、対戦打席1331から日本人との26打席を引いた1305打席を、被本塁打66本から6本を引いた60本で割った値。
- 飛距離と打球速度は Baseball Savant の計測値をメートル法に換算した(1フィート=30.48センチ、1マイル=1.609344キロ)。球速も同様に換算しており、原データは86.0マイルと92.9マイル、打球速度は103.3マイルと109.4マイル、飛距離は386フィートと412フィート。球種の判定は Savant の分類による。
- 2004年・2005年・2007年の3本には球種・球速の記録がなく、2008年から2014年までの本塁打には飛距離と打球速度の記録がない。計測の開始時期が違うためで、集計から漏れているわけではない。
