STATSBaseball ArchivesBASEBALL STATS ANALYSIS
← ニュース一覧
ニュース2026-08-25今永昇太菅野智之千賀滉大佐々木朗希山本由伸被本塁打StatcastMLB

日本人投手の一発はMLB平均の1.2倍 打たれ方は2つに割れた

日本人投手の一発はMLB平均の1.2倍 打たれ方は2つに割れた

8月23日、千賀滉大が9回裏にサヨナラ本塁打を浴びて0勝9敗になった。同じ日、菅野智之も3回で降板している。2026年の日本人投手9人を合わせた被本塁打率は9イニングあたり1.40本。MLB全体の1.16本を2割上回る。だが1球ごとの計測データを開くと、打たれ方は2つの型に割れていた。今永昇太は被打球の速度が同条件371投手の平均を下回りながら30本を浴び、菅野智之は6人で最も高めを使わないのにバレル率が371人中5位に入っている。そして山本由伸と大谷翔平は、どちらの型にも入らない。

Baseball Archives 編集部2026-08-25データ出典 MLB Stats API

8月23日、ホワイトソックス戦の9回裏。1対1の同点でマウンドに上がったメッツの千賀滉大は、先頭打者を三塁ゴロに仕留めたあと、2人目のトリスタン・ピーターズにセンターへ運ばれた。サヨナラ本塁打。これで今季0勝9敗になった。

同じ日、ロッキーズの菅野智之はガーディアンズ打線に3回9安打5失点で降板している。日本人先発が並んで打ち込まれた一日だった。

千賀は3年前、メッツの1年目に166回1/3を投げて防御率2.98。被本塁打は17本しかなかった。その男が今季は52回で13本を浴びている。

「日本人投手はMLBの球場で一発を食う」という話は昔からある。今季の数字は、たしかにその通りに見える。だが打球のデータを開くと、打たれ方は同じではなかった。

9イニングあたり1.40本という数字

2026年に投げた日本人投手9人の成績を合算すると、826回2/3で129本塁打。9イニングあたり1.40本になる。MLB全体は35006回1/3で4528本、9イニングあたり1.16本だから、日本人だけを取り出すと2割ほど多い。

個別に見ると、偏りはもっと極端である。

投手 投球回 被本塁打 被本塁打率 MLB内の位置
千賀滉大 52回 13 2.25 50回以上269人中4位(悪い順)
菅野智之 121回2/3 26 1.92 100回以上105人中6位(悪い順)
今永昇太 145回1/3 30 1.86 同7位
佐々木朗希 116回 21 1.63 同13位
山本由伸 151回2/3 15 0.89 同75位
大谷翔平 85回2/3 4 0.42 50回以上269人中255位(悪い順)

上の4人はMLB平均の1.4倍から1.9倍。下の2人は平均の8割にも届かず、大谷に至っては4割弱である。同じ「日本人投手」でこれだけ開く時点で、国籍の話ではないことがわかる。

過去を見ても同じである。黒田博樹はMLB7年で、最も多い2011年でも1.07。山本由伸の通算は0.78。一方で田中将大は1.36、菊池雄星は1.49だった。ボールや球場のせいなら、全員が同じ方向に動くはずである。

打たれ方は、2つに割れていた

Statcastは1球ごとに、打たれた打球の速度と角度を記録している。この2つの組み合わせが、統計上もっとも長打になりやすい領域に入った打球を「バレル」と呼ぶ。

打球を100個以上打たれた371投手を並べて、角度と速度、そしてバレル率で6人を見る。

投手 平均打球角度 角度が高い順 被打球速度 バレル率 バレル率が高い順
千賀滉大 19.2度 45位 144.5キロ 12.1% 12位
今永昇太 18.7度 55位 142.3キロ 9.8% 56位
菅野智之 15.2度 140位 146.3キロ 13.0% 5位
佐々木朗希 12.5度 229位 144.5キロ 9.8% 58位
大谷翔平 11.2度 275位 140.7キロ 3.8% 351位
山本由伸 9.2度 309位 141.1キロ 6.3% 264位

371投手の平均は、打球角度13.8度、被打球速度142.7キロ、バレル率7.6%である。

ここで型が割れる。今永は角度が高いのに、被打球の速度は平均を下回る。菅野は角度が今永より3度以上低いのに、バレル率は371人中5位。上げられているのか、強く打たれているのか。そして千賀は、この2つのどちらの側にも数字が振れている。

今永は、強く打たれずに30本浴びている

今永の被打球の平均速度は142.3キロ。371投手の平均142.7キロを、わずかに下回っている。152.9キロ以上の強い当たりの割合も35.5%で、こちらも371人の平均を下回る。強く打たれているわけではない。それでも30本を浴びた。

角度である。平均打球角度18.7度は371人中55位。フライになりやすい打たせ方をしている。

1球ごとのデータを見ると、投球そのものに手がかりがあった。今永のフォーシームは縦の変化量が45.1センチで、この6人の中でいちばん大きい。Statcastの縦の変化量は、重力だけで落ちる場合を基準に、どれだけ浮き上がったかを示す。値が大きいほど落ちにくい球である。

そして今永は、その球を高めに投げる。今季投げた全2328球のうち38.4%が、ストライクゾーンの上3分の1か、そこから上に外れたコースだった。6人の中で最も多く、2位の大谷(32.2%)を6ポイント上回る。フォーシームがホームベース上を通る平均の高さは90.6センチで、これも6人で最も高い。次は山本の81.7センチである。

落ちない球を、高い位置に。打者がボールの下をこすれば、打球は上がる。上がった打球の一部はスタンドまで届く。今永が浴びた30本のうち最も多いのは、そのフォーシームによる13本だった。

ただし、この13本は「フォーシームだけが狙い撃ちされている」という意味ではない。今永の投球の41.4%はフォーシームで、被弾に占める割合43.3%とほとんど変わらない。高めについても同じで、13本のうち高めのゾーンから出たのは8本だが、今永のフォーシームはもともと64.7%が高めに行く。

突出して打たれている一点があるのではなく、投球そのものが打球の角度を押し上げている。

一時的な不調では説明が付かない。MLB1年目の2024年は1.40だったが、2025年は1.93、2026年は1.86。2年続けて同じ水準にいる。

菅野は、いちばん高めを使わないのに強く打たれる

菅野は逆だった。ストライクゾーンの上3分の1か、そこから上に外れたコースに投げた割合は19.3%で、6人の中で最も低い。今永の半分である。高めを使わない投球をしている。

それでもバレル率13.0%は、371人のワースト5位に入る。被打球の平均速度146.3キロは6人で最も速く、152.9キロ以上の強い当たりが43.6%。371人の平均を5ポイント上回る。

飛距離にも出ている。浴びた本塁打の平均飛距離125.9メートルは6人で最も遠い。次に遠い今永でも121.9メートルである。ただし菅野の本拠地はクアーズ・フィールドで、飛距離だけは球場の条件と切り分けられない。菅野が強く打たれていることを示しているのは、打った瞬間に計測される速度とバレル率のほうである。

誰もが思いつくのは球速だろう。菅野のフォーシームは平均148.7キロで、佐々木や大谷の157キロ台より9キロ遅い。ゾーンの下でも力負けする、という説明は筋が通って見える。

だが、この6人でいちばん遅いフォーシームを投げているのは今永の147.4キロだ。その今永の被打球速度は142.3キロで平均を下回り、バレル率9.8%も菅野の13.0%には遠く届かない。球速の遅さが、そのまま強い当たりに直結するわけではない。

かわりに目につくのは、打たれた球種の散らばり方だった。菅野の26本はカッター7本、フォーシーム7本、スプリット5本、スライダー3本、スイーパー2本、シンカー1本、カーブ1本。最も多いカッターとフォーシームでも各7本で、全体の3割に届かない。ただしこれは、投球の球種構成そのものが割れていることの裏返しでもある。菅野のフォーシームは1992球のうち397球。今永の4割に対して、2割しかない。

とはいえ、これも菅野がなぜ強く打たれるのかの答えではない。原因が1つの球種の不調に還元できない形をしている、というだけだ。そして今年になって落ちたという話でもない。菅野は昨季も1.89で、今季の1.92とほとんど変わっていない。渡米した時点からこの水準にある。

佐々木も、菅野と同じ形で打たれている

佐々木の平均打球角度12.5度は371人中229位。ゴロとフライの比率も1.08で、上げられてはいない。今永型ではない。

だが152.9キロ以上の打球は43.9%あり、菅野の43.6%を上回って6人で最も多い。被打球の平均速度144.5キロも371人平均の142.7キロを超える。角度は抑えているのに、当たったときに強い。

ただし菅野と決定的に違うのは球速だ。佐々木のフォーシームは157.5キロで6人中2番目に速く、「球が遅いから力負けする」では、この21本は説明が付かない。

千賀は、どちらにも名前が出てくる

千賀の平均打球角度19.2度は6人でいちばん高く、371人中45位。バレル率12.1%も12位に入る。上げられていて、なおかつ強く打たれている。

ただし今永と同じ理由ではない。千賀が高めに投げた割合は29.1%。今永の38.4%より9ポイント以上低い。

球そのものも違う。フォーシームの縦の変化量は41.2センチで今永より約4センチ小さく、ホームベース上を通る高さは76.0センチ。今永より約15センチ低い位置を通している。それでも打球は上がった。ゴロとフライの比率0.63は、今永の0.66よりさらにフライ寄りである。高さでも変化量でも説明が付かない。

母数の話も添えておく。千賀の52回は6人で最も短く、打球140個の上にこの数字が乗っている。

山本と大谷は、そもそも打たれていない

山本の平均打球角度9.2度は371人中309位。低い打球を打たせている。バレル率6.3%も264位で、平均の7.6%を下回る。上げさせず、強くも打たせていない。

その理由を投球に求めたくなる。だが山本のフォーシームは縦の変化量41.0センチ、通す高さ81.7センチ。千賀の41.2センチ・76.0センチとほとんど変わらない。同じような球の通し方をして、片方は打球が上がらず、片方は6人でいちばん上がっている。

大谷はさらに極端だ。バレル率3.8%は371人中351位。85回2/3で浴びた本塁打は4本しかなく、その4本はすべてフォーシームだった。

同じ日本から来て、同じボールを握っている。それでも被本塁打率は0.42から2.25まで、5倍以上に散らばる。

決めているのは国籍ではない

千賀の2023年は0.92、2025年は0.95だった。それが今季は2.25である。今季は21試合中8試合の先発で4セーブを挙げ、投球回も52回にとどまった。それでも差は2倍を超える。

一発を浴びるかどうかは、日本から来たかどうかで決まってはいない。9人を束ねた1.40の中身は、投手ごとにばらばらだった。菅野と佐々木がなぜ強く打たれるのか、千賀がなぜ上げられるのかは、この記事のデータでは説明が付かなかった。山本と千賀は、球速も変化量もほとんど同じフォーシームを、6センチと違わない高さに通している。

2つの型は打たれ方の分類であって、原因の分類ではない。

この記事の数字について

関連

数字はすべて MLB Stats API ほかの実データです。データの出典と方針
選手データ

今永昇太の成績・年度別・高度指標を見る

開く →

関連・注目のニュース

← ニュース一覧へ戻る