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ニュース2026-08-18千賀滉大メッツセーブクローザーフォークボールStatcast球種分析MLB

0勝8敗の千賀滉大が9回を締めている 3セーブの中身

0勝8敗の千賀滉大が9回を締めている 3セーブの中身

シーズン0勝8敗、防御率7.79。18試合に投げて勝ち星のないメッツ・千賀滉大が、いまチームの9回を任されている。3セーブは3度の機会すべてで成功し、8月の5登板は5イニング無失点、被安打1本だけ。1球ごとの計測データを見ると、先発時に7種類あった球種が、速球とフォークの2つで投球の88%を占める形に変わっていた。9イニングあたりの与四球は6.82個から3.60個へ半減。奪った三振7つのうち6つがフォークで、7つすべてが空振りだった。

Baseball Archives 編集部2026-08-18データ出典 MLB Stats API

メッツの千賀滉大が16日(現地時間)、ナショナルズ戦の9回に登板し、11球で3者凡退に抑えて今季3セーブ目を挙げた。4-3の1点差。最後の2人はどちらもお化けフォークで空を切らせている。

セーブは3登板連続。8月に入ってからの5登板は、5イニングを投げて無失点、被安打はわずか1本である。

ところが、千賀の今季成績は0勝8敗、防御率7.79。開幕はローテーションの一角だった。最後に先発したのは7月31日である。2023年には29試合に先発して12勝、202個の三振を奪っている。

18試合に登板して、いまだ勝ち星がない。その投手がいま、9回のマウンドに送り出されている。変わったのは、投げ分ける球種の数だった。

8敗のうち7敗は、先発でついた

役割ごとに分けると、輪郭がはっきりする。

2026年の役割 登板 投球回 自責点 防御率 敗戦
先発 8 31回2/3 34 9.66 7
2イニング以上の救援 3 10回2/3 7 5.91 1
1イニング前後の救援 7 7回1/3 2 2.45 0

残る1敗は6月28日、5回2失点で投げたロングリリーフでついたものだ。

ただし、ブルペンに移ったこと自体が効いたわけではない。2イニング以上のロングリリーフでは防御率5.91、7月18日には1イニングあまりで2失点している。いちばん下の2.45という数字も、中身は8月に偏っていて、7月の2登板だけを取り出せば2回1/3で自責2、防御率7.71になる。はっきり動いたのは、8月に入ってからだ。

もうひとつ、成績表からは見えない空白がある。千賀が4月26日に先発したあと、次にマウンドへ上がったのは6月16日だった。51日間、1試合も投げていない。 その理由は成績データには残らない。この記事で扱えるのは、あくまで投げた球のほうである。

7球種を散らしていた男が、2球種で8割8分

1球ごとの計測データを開くと、変化は一目で分かる。

球種 先発8試合 8月の5登板
フォーシーム 37.9% 61.3%
フォーク 21.1% 26.7%
カッター 20.0% 4.0%
スイーパー 9.9% 6.7%
スライダー 6.4% 0%
シンカー 4.4% 1.3%
カーブ 0.3% 0%

先発の千賀は、7種類の球を投げ分けていた。先発は同じ打者と二度、三度と向き合う。カッターもスイーパーもスライダーも、手の内を隠すための持ち駒に見える。

8月の千賀は違う。速球とフォークの2つだけで、投球の88.0%を占めている。 カッターは5球に1球から25球に1球へ。スライダーにいたっては1球も投げていない。

絞った分、1球あたりの数字は上がった。フォーシームの平均球速は先発時の154.6キロから156.5キロへ。8月の5登板では161.4キロを計測した球もあった。1イニングで出し切る投げ方になった、と読める。

四球が半分になった

この5試合でいちばん大きく動いたのは、次の数字である。

先発8試合 8月の5登板
9イニングあたり与四球 6.82個 3.60個
ストライク率 59.1% 64.0%
ゾーンに投げた割合 45.6% 52.0%

先発時の千賀は、ゾーンの中に投げ込めた球が半分に届かなかった。9イニングに換算して6.82個の四球。走者を置いてから勝負するしかない投手が、7種類の球で的を絞らせまいとしていた、という並びに見える。それが31回2/3で防御率9.66という結果になっている。

いまは投球の半分以上がゾーンの中に入り、四球はほぼ半減した。防御率9.66の投手が5イニング無失点になった理由として、いちばん直接的なのはここだ。

なお、この記事の主張に都合の悪い数字も出しておく。振らせた球を空振りにする割合は29.5%から25.7%へ、むしろ下がっている。ただし8月に振ってきたのは35球。先発時と同じ29.5%だったとしても空振りは10球で、実際の9球との差は1球あまりしかない。読み解けるほどの幅ではない。

振ってきた3球のうち、2球が空を切る

一方で、決め球のフォークは数字の上ではっきり跳ねている。空振り率は先発時の43.1%から66.7%。振ってきた12球のうち8球が空を切った。

8月の5登板で奪った三振は7つ。その決め球の内訳が、この記事でいちばん雄弁な数字かもしれない。

(8月4日は無失点に抑えたが三振はゼロ)

7つのうち6つがフォーク。しかも7つすべてが空振り三振で、見逃しは1つもない。 156キロの速球を待たされた打者が、21キロ遅い球に手を出し、当てられない。この形が、直近4登板のすべてで成立している。

速球でゾーンを押してストライクを稼ぎ、フォークで決めにいく。8月の千賀は、2つの球にはっきり役割を分けた。

もっとも、都合よく解釈しすぎるのは危ない。8月の5登板は75球しかない。フォークの66.7%も、振ってきた12球のうち8球という数字である。三振7つという母数も含めて、5試合の傾向が来月も続く保証はどこにもない。

そして、球種を絞ったことと1イニング限定になったことは、この母数では切り分けられない。3人しか相手にしないなら球を散らす必要がなく、全力で投げれば球速も上がる。球種の変化は、役割変更の結果でもありうる。

なぜ9回だったのか

9回が空いたタイミングは、日付を並べれば見えてくる。

8月10日、メッツは守護神デビン・ウィリアムズを右肩の故障で15日間の負傷者リストに入れた(8日に遡及)。16セーブを挙げていたクローザーの離脱である。同じ日、千賀はブレーブス戦の9回に登板して、メジャー初セーブを記録した。

ただし、9回が千賀のものになったわけではない。8月の5登板のうち、9回に投げたのは4試合で、8月6日は7回の登板だった。 ウィリアムズがまだ投げられた8月4日にも千賀は9回に上がっているし、17日のパドレス戦を締めたのはドゥアルテである。メッツはいま複数の投手で最終回を回している。千賀の3セーブは、3度の機会を3度とも成功させた結果であって、固定された役割の産物ではない。

20年で7人、そのうちセーブを持っていたのは1人

「0勝8敗」がどれくらい珍しいのかも、調べておく価値がある。

2026年のMLBで登板した800人あまりのうち、勝ち星ゼロで6敗以上を喫しているのは千賀(0勝8敗)と、レッズ・レンジャーズ・マーリンズと渡り歩いたクリス・パダック(0勝7敗)の2人だけ。8敗以上に絞れば千賀ひとりである。

過去にさかのぼると、2006年から2025年までの20年間で「0勝8敗以上」に到達したのは7人。そのうちセーブを記録していたのは、2009年のブラッド・リッジ(0勝8敗31セーブ、防御率7.21)ただひとりだった。

ただしリッジの数字は、前年に41回のセーブ機会を41回とも締めてフィリーズを世界一に導いた守護神が、翌年に崩れた末のものである。その2009年は42機会で31セーブ、11度のセーブ失敗。千賀は逆をたどっている。先発として崩れた投手が、シーズン終盤に9回へ回ってきた。同じ「0勝8敗+セーブ」でも、向きが正反対だ。

勝ち星は、たぶんこのまま増えない

9回を締める投手に勝ち星がつく道は、ほとんど残っていない。セーブを積むほど、勝ち星からは遠ざかる。

メッツは57勝69敗。地区5位で17.5ゲーム差、ワイルドカードでも10ゲーム差をつけられたまま、残り36試合を戦う。千賀の0勝は、このまま動かない可能性が高い。

それでも、この5試合で見えたものは小さくない。球速は落ちていない。フォークは相変わらず空を切らせている。球種を2つに絞ってからの千賀は、少なくとも別の投手のように見える。

この形が今季だけの話で終わるのか、それとも来季の姿になるのか。判断するには、75球はあまりに少ない。

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