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ニュース2026-08-15エドウィン・ディアスドジャース空振り率スライダーStatcast球種分析MLB

3連覇を狙うドジャースの誤算 守護神ディアスに何が起きているのか

3連覇を狙うドジャースの誤算 守護神ディアスに何が起きているのか

振ってはくれる。当たってしまう。ワールドシリーズ3連覇を狙うドジャースの守護神エドウィン・ディアスが13日、またも痛恨のセーブ失敗で佐々木朗希の6勝目を消した。直近4登板で3度目。だが1球ごとの計測データを開くと、ストレートの球速も回転数も横の曲がり幅も前年の水準に戻っていた。それでいて空振り率だけが4割から2割へ落ちている。しかも打者はボール球を前より多く振っている。同点に追いつかれた2本の適時打は、どちらもかつての決め球スライダーだった。

Baseball Archives 編集部2026-08-15データ出典 MLB Stats API

ドジャースの守護神エドウィン・ディアスが13日(現地時間)、またも痛恨のセーブ失敗を喫した。2点リードの9回に4安打を浴びて3失点。6回を2失点で投げ切った佐々木朗希の6勝目は、そのまま消えた。チームは4-5で敗れ、ディアスに黒星がついた。

セーブ失敗は直近4登板で3度目。3か月あまりの離脱から戻ってきた7試合でも1勝2敗、防御率12.71と苦しんでいる。

ドジャースは2024年にヤンキース、2025年にブルージェイズを倒してワールドシリーズを連覇している。3連覇のかかる今季、その9回を任されているのがディアスだ。前年はメッツで62試合を投げて自責点12。防御率1.63の絶対的守護神だった。

球団にとって、これほどの誤算はない。その男に、どんな異変が起きているのか。

答えを先に言えば、球速でも回転でもない。 1球ごとの計測データを開くと、衰えの痕跡どころか、逆のものが出てくる。

「怪我明けだから」では説明がつかない

登板 投球回 自責点 防御率
2025 メッツ 62 66回1/3 12 1.63
2026 怪我前 7 6回 7 10.50
2026 復帰後 7 5回2/3 8 12.71

怪我明けだから打たれている、という説明は成り立たない。ディアスは怪我をする前から打たれていた。 開幕からの7登板ですでに防御率10.50。故障で離脱したのは、崩れた後のことである。10.50と12.71、登板が少ないぶん振れ幅は大きく、優劣をつける意味はない。離脱の前も後も、同じようにひどい。

球速と回転は、はっきり戻っている

フォーシーム 2025 怪我前 復帰後
球速 156.4キロ 154.0 155.6
回転数 2327 2328 2328
横の曲がり幅 33.3センチ 26.7 34.8

怪我をする前は、球速が2.4キロ落ち、曲がり幅も6.6センチ減っていた。体が万全でなかったことは、数字にはっきり出ている。

復帰後、その両方が戻った。球速は155.6キロ、回転数にいたっては前年との差がわずか1回転。曲がり幅は前年を上回ってさえいる。

ストライク率は63.3%、63.6%、67.2%と推移し、復帰後がいちばん高い。 ゾーンには前年以上に投げ込めている。

球速。回転。横の曲がり。この3つは戻っている。

それなのに、空振りだけが戻らない

空振り率
2025 メッツ 41.5%
2026 怪我前 20.7%
2026 復帰後 23.0%

球速も回転も横の曲がりも戻したのに、振らせた球を空振りにする割合だけが、4割から2割へ、ほぼ半分に落ちている。

打者に対して三振を奪う割合(K%)も、38.0%から27.7%へ下がった。1イニングあたりの三振数だけを見ると13.30から13.89へ増えているが、これは走者を出して対戦打者そのものが増えた結果にすぎない。

実際、WHIPは0.87から2.49へ跳ね上がった。1イニングあたり2人半の走者を背負う計算で、前年は1人にも満たない。与四球も9イニングあたり2.85個から6.17個へ、倍以上に増えている。

ここで誰もが思いつくのは「見切られて振ってもらえなくなった」という説明だろう。だが数字は、まったく逆を指していた。

振ってはくれる。当たってしまう

去年のディアスは、ゾーンの外に投げれば、振ってきた10球のうち6球を空振りにできた。いまは3球に届かない。

ボール球を振らせた率 ボール球での空振り率
2025 メッツ 30.5% 61.9%
2026 怪我前 32.1% 40.0%
2026 復帰後 33.8% 28.0%

打者はいまも手を出している。それどころか、ボール球を振ってくる頻度は前年より高い。前年以上に誘い、前年以上に振らせて、それでも当てられている。

当てられた打球も強い。被打球速度は前年の132.9キロに対し、復帰後は139.0キロ。誘って、振らせて、痛打される。

決め球が、決め球でなくなった

スライダー 2025 怪我前 復帰後
空振り率 44.0% 28.1% 24.1%
ボール球を振らせた率 35.7% 41.7% 48.3%
使用率 47.3% 47.0% 38.9%

前年のディアスは、投球のほぼ半分をスライダーが占め、その空振り率は44.0%。2球に1球近くを空振りにできる球を、それだけの頻度で投げ込んでいた。これが最強の武器だった。

その球が、いまは24.1%しか空振りを奪えない。しかも打者は48.3%という高い頻度でボール球のスライダーを追いかけている。誘いには乗っている。乗ったうえで、当てられている。

配球を変えたせいではない。怪我をする前、スライダーの使用率は47.0%と前年とほぼ同じだった。それでも空振り率は28.1%まで落ちている。復帰後は38.9%まで減らしているが、空振りの低下はそれより前から始まっていた。組み立てを変える前に、球のほうが変わっていた。

13日のブルワーズ戦が、そのまま縮図だった。先頭のコントレラスは143キロのスライダーを見逃して三振。最後のサンチェスも156キロの直球に手が出ず、判定へのチャレンジまでして三振が確認された。球は、間違いなく来ていた。

その間に挟まれた4連打のうち、同点に追いつかれた2本──シュリオが打った147キロ、ミッチェルが打った145キロ──は、どちらもスライダーだった。

2つの球が、近づいている

ここで、球の軌道そのものを開いてみる。

Statcastは1球ごとに「縦の変化量」を計測している。重力だけで落ちる場合を基準に、そこからどれだけ浮き上がったかを示す数字だ。値が大きいほどホップし、小さいほど素直に落ちる。ストレートは大きく、スライダーは小さい。このが、打者を惑わせる正体である。

縦の変化量(大きいほど浮く) 2025 復帰後
ストレート 32.8センチ 29.0
スライダー 9.7センチ 13.5
2球種の差 23.1センチ 15.5

数字は、両側から動いていた。

ストレートは浮かなくなった。 そしてスライダーは、落ちなくなった。 2つが真ん中で歩み寄っている。前年は23センチ離れていた軌道が、いまは15.5センチしかない。7センチ以上、近づいた。

球速の差も同じ方向に動いている。13.0キロから11.1キロへ。スライダーはむしろ1キロ速くなり、ストレートとの落差を自ら削っている。

軌道も速さも近い2つの球は、ひとつのスイングで両方に対応できてしまう。 前年のディアスは、同じ腕の振りから「伸びる球」と「落ちる球」を出し分けていた。打者はどちらかに賭けるしかなく、外せば空を切った。いまは賭ける必要がない。ストレートを待って振り出したバットが、そのままスライダーにも届いてしまう。

だから打者はいまも同じように誘いに乗り、同じように振り、それでも当てられる。ボール球を追う頻度が上がったのに空振りが減った、という奇妙な数字は、ここで説明がつく。

なぜ2つが近づいたのか

原因を探すと、リリースポイントに行き着く。

フォーシームのリリースの高さ(地面から)
2025年3月 151.1センチ
2025年8月 144.3センチ
2025年9月 146.1センチ
2026年3月 142.0センチ
2026年8月 138.7センチ

腕の位置が、年をまたいで一段下がっている。2026年8月の138.7センチは、2025年以降でディアスの最も低い位置である。

低い腕から投げたストレートは、浮かない。リリースの高さは腕の角度の目安にすぎないが、その目安で投手を並べると、数字は同じ向きに並ぶ。

リリースの高さ ストレートの縦の変化量
ゲリット・コール(2024年) 183センチ 44.7センチ
山本由伸(2026年) 165センチ 41.1センチ
ディアス(2025年) 147センチ 32.8センチ
ディアス(2026年) 140センチ 30.5センチ

腕が高いほどホップし、低いほどホップしない。ディアスはもともとMLBでは腕の低い部類の投手で、そこからさらに下がった。ストレートが浮かなくなったのは、この並びの上を素直に滑っただけである。

ただし、ここには但し書きがいる。腕が下がること自体は、去年も起きていた。 2025年も3月の151.1センチから8月の144.3センチまで、7センチ近く下がっている。それでも防御率は1.63だった。

違うのは、その後である。去年は9月に146.1センチまで戻した。今年は一段低いところから始まり、そこからさらに下げて、8月は138.7センチ。去年の最も低かった月より、5.6センチ低い。下がること自体ではなく、行き着いた位置が去年と違う。

もちろんこれは推論である。腕が下がった理由がどこにあるのか、スライダーが落ちなくなったこととどうつながるのかまでは、Statcastには写らない。だが「球速も回転も戻ったのに空振りだけが戻らない」という不可解さに対して、いま計測値の中で筋の通る説明はこれだけである。

2年前は、9月に戻ってきた

ディアスは2023年に膝を痛め、シーズンを丸ごと棒に振っている。翌2024年は月ごとに数字が激しく揺れた。

2024年 空振り率 スライダーの空振り率
6月 30.8% 35.7%
7月 36.7% 29.3%
8月 33.8% 32.4%
9月 44.3% 61.4%

スライダーの空振り率は、夏のあいだ3割前後を上下していた。それが9月、61.4%まで跳ね上がる。この月のディアスは13登板14回で26三振を奪い、月間防御率1.93。最後のひと月で、かつての支配的な姿を取り戻していた。

大怪我明けの守護神が、シーズン終盤に戻ってきた実例がここにある。

ただし条件は同じではない。2024年は4月にいったん空振り率40.0%まで戻し、そこからまた落ちている。9月まで安定しなかった。しかもシーズン防御率は3.52。1.63という本来の数字に帰ってきたのは、翌2025年である。丸ごと1年かかっている。

そして2024年は、最も悪い月でも空振り率は3割あった。いまの23.0%は、あの年のどの月よりも低い。落ちている場所が、2年前より深い。

ポストシーズンに間に合うのか

ドジャースの残り試合は40。復帰後は16日で7登板だから、同じペースなら18〜20回のマウンドが残る。2024年9月に立て直したときは、13登板だった。回数だけなら足りている。

直すべき対象は、球速でも制球でもない。腕の位置と、そこから生まれる2球種の落差である。フォームの微調整は、球速を上げることより時間がかかることもあれば、ある日突然はまることもある。2024年9月のディアスがそうだった。

13日、佐々木朗希は6回を2失点で投げ切り、勝利投手の権利を持ってベンチに下がった。その勝ちを消したのは、球速も回転も前年に戻った守護神の、たった2アウト分の投球だった。

戻すべきものは、もう見えている。あとは10月までに間に合うかどうかだ。

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