ドジャースの守護神エドウィン・ディアスが13日(現地時間)、またも痛恨のセーブ失敗を喫した。2点リードの9回に4安打を浴びて3失点。6回を2失点で投げ切った佐々木朗希の6勝目は、そのまま消えた。チームは4-5で敗れ、ディアスに黒星がついた。
セーブ失敗は直近4登板で3度目。3か月あまりの離脱から戻ってきた7試合でも1勝2敗、防御率12.71と苦しんでいる。
ドジャースは2024年にヤンキース、2025年にブルージェイズを倒してワールドシリーズを連覇している。3連覇のかかる今季、その9回を任されているのがディアスだ。前年はメッツで62試合を投げて自責点12。防御率1.63の絶対的守護神だった。
球団にとって、これほどの誤算はない。その男に、どんな異変が起きているのか。
答えを先に言えば、球速でも回転でもない。 1球ごとの計測データを開くと、衰えの痕跡どころか、逆のものが出てくる。
「怪我明けだから」では説明がつかない
| 登板 | 投球回 | 自責点 | 防御率 | |
|---|---|---|---|---|
| 2025 メッツ | 62 | 66回1/3 | 12 | 1.63 |
| 2026 怪我前 | 7 | 6回 | 7 | 10.50 |
| 2026 復帰後 | 7 | 5回2/3 | 8 | 12.71 |
怪我明けだから打たれている、という説明は成り立たない。ディアスは怪我をする前から打たれていた。 開幕からの7登板ですでに防御率10.50。故障で離脱したのは、崩れた後のことである。10.50と12.71、登板が少ないぶん振れ幅は大きく、優劣をつける意味はない。離脱の前も後も、同じようにひどい。
球速と回転は、はっきり戻っている
| フォーシーム | 2025 | 怪我前 | 復帰後 |
|---|---|---|---|
| 球速 | 156.4キロ | 154.0 | 155.6 |
| 回転数 | 2327 | 2328 | 2328 |
| 横の曲がり幅 | 33.3センチ | 26.7 | 34.8 |
怪我をする前は、球速が2.4キロ落ち、曲がり幅も6.6センチ減っていた。体が万全でなかったことは、数字にはっきり出ている。
復帰後、その両方が戻った。球速は155.6キロ、回転数にいたっては前年との差がわずか1回転。曲がり幅は前年を上回ってさえいる。
ストライク率は63.3%、63.6%、67.2%と推移し、復帰後がいちばん高い。 ゾーンには前年以上に投げ込めている。
球速。回転。横の曲がり。この3つは戻っている。
それなのに、空振りだけが戻らない
| 空振り率 | |
|---|---|
| 2025 メッツ | 41.5% |
| 2026 怪我前 | 20.7% |
| 2026 復帰後 | 23.0% |
球速も回転も横の曲がりも戻したのに、振らせた球を空振りにする割合だけが、4割から2割へ、ほぼ半分に落ちている。
打者に対して三振を奪う割合(K%)も、38.0%から27.7%へ下がった。1イニングあたりの三振数だけを見ると13.30から13.89へ増えているが、これは走者を出して対戦打者そのものが増えた結果にすぎない。
実際、WHIPは0.87から2.49へ跳ね上がった。1イニングあたり2人半の走者を背負う計算で、前年は1人にも満たない。与四球も9イニングあたり2.85個から6.17個へ、倍以上に増えている。
ここで誰もが思いつくのは「見切られて振ってもらえなくなった」という説明だろう。だが数字は、まったく逆を指していた。
振ってはくれる。当たってしまう
去年のディアスは、ゾーンの外に投げれば、振ってきた10球のうち6球を空振りにできた。いまは3球に届かない。
| ボール球を振らせた率 | ボール球での空振り率 | |
|---|---|---|
| 2025 メッツ | 30.5% | 61.9% |
| 2026 怪我前 | 32.1% | 40.0% |
| 2026 復帰後 | 33.8% | 28.0% |
打者はいまも手を出している。それどころか、ボール球を振ってくる頻度は前年より高い。前年以上に誘い、前年以上に振らせて、それでも当てられている。
当てられた打球も強い。被打球速度は前年の132.9キロに対し、復帰後は139.0キロ。誘って、振らせて、痛打される。
決め球が、決め球でなくなった
| スライダー | 2025 | 怪我前 | 復帰後 |
|---|---|---|---|
| 空振り率 | 44.0% | 28.1% | 24.1% |
| ボール球を振らせた率 | 35.7% | 41.7% | 48.3% |
| 使用率 | 47.3% | 47.0% | 38.9% |
前年のディアスは、投球のほぼ半分をスライダーが占め、その空振り率は44.0%。2球に1球近くを空振りにできる球を、それだけの頻度で投げ込んでいた。これが最強の武器だった。
その球が、いまは24.1%しか空振りを奪えない。しかも打者は48.3%という高い頻度でボール球のスライダーを追いかけている。誘いには乗っている。乗ったうえで、当てられている。
配球を変えたせいではない。怪我をする前、スライダーの使用率は47.0%と前年とほぼ同じだった。それでも空振り率は28.1%まで落ちている。復帰後は38.9%まで減らしているが、空振りの低下はそれより前から始まっていた。組み立てを変える前に、球のほうが変わっていた。
13日のブルワーズ戦が、そのまま縮図だった。先頭のコントレラスは143キロのスライダーを見逃して三振。最後のサンチェスも156キロの直球に手が出ず、判定へのチャレンジまでして三振が確認された。球は、間違いなく来ていた。
その間に挟まれた4連打のうち、同点に追いつかれた2本──シュリオが打った147キロ、ミッチェルが打った145キロ──は、どちらもスライダーだった。
2つの球が、近づいている
ここで、球の軌道そのものを開いてみる。
Statcastは1球ごとに「縦の変化量」を計測している。重力だけで落ちる場合を基準に、そこからどれだけ浮き上がったかを示す数字だ。値が大きいほどホップし、小さいほど素直に落ちる。ストレートは大きく、スライダーは小さい。この差が、打者を惑わせる正体である。
| 縦の変化量(大きいほど浮く) | 2025 | 復帰後 |
|---|---|---|
| ストレート | 32.8センチ | 29.0 |
| スライダー | 9.7センチ | 13.5 |
| 2球種の差 | 23.1センチ | 15.5 |
数字は、両側から動いていた。
ストレートは浮かなくなった。 そしてスライダーは、落ちなくなった。 2つが真ん中で歩み寄っている。前年は23センチ離れていた軌道が、いまは15.5センチしかない。7センチ以上、近づいた。
球速の差も同じ方向に動いている。13.0キロから11.1キロへ。スライダーはむしろ1キロ速くなり、ストレートとの落差を自ら削っている。
軌道も速さも近い2つの球は、ひとつのスイングで両方に対応できてしまう。 前年のディアスは、同じ腕の振りから「伸びる球」と「落ちる球」を出し分けていた。打者はどちらかに賭けるしかなく、外せば空を切った。いまは賭ける必要がない。ストレートを待って振り出したバットが、そのままスライダーにも届いてしまう。
だから打者はいまも同じように誘いに乗り、同じように振り、それでも当てられる。ボール球を追う頻度が上がったのに空振りが減った、という奇妙な数字は、ここで説明がつく。
なぜ2つが近づいたのか
原因を探すと、リリースポイントに行き着く。
| フォーシームのリリースの高さ(地面から) | |
|---|---|
| 2025年3月 | 151.1センチ |
| 2025年8月 | 144.3センチ |
| 2025年9月 | 146.1センチ |
| 2026年3月 | 142.0センチ |
| 2026年8月 | 138.7センチ |
腕の位置が、年をまたいで一段下がっている。2026年8月の138.7センチは、2025年以降でディアスの最も低い位置である。
低い腕から投げたストレートは、浮かない。リリースの高さは腕の角度の目安にすぎないが、その目安で投手を並べると、数字は同じ向きに並ぶ。
| リリースの高さ | ストレートの縦の変化量 | |
|---|---|---|
| ゲリット・コール(2024年) | 183センチ | 44.7センチ |
| 山本由伸(2026年) | 165センチ | 41.1センチ |
| ディアス(2025年) | 147センチ | 32.8センチ |
| ディアス(2026年) | 140センチ | 30.5センチ |
腕が高いほどホップし、低いほどホップしない。ディアスはもともとMLBでは腕の低い部類の投手で、そこからさらに下がった。ストレートが浮かなくなったのは、この並びの上を素直に滑っただけである。
ただし、ここには但し書きがいる。腕が下がること自体は、去年も起きていた。 2025年も3月の151.1センチから8月の144.3センチまで、7センチ近く下がっている。それでも防御率は1.63だった。
違うのは、その後である。去年は9月に146.1センチまで戻した。今年は一段低いところから始まり、そこからさらに下げて、8月は138.7センチ。去年の最も低かった月より、5.6センチ低い。下がること自体ではなく、行き着いた位置が去年と違う。
もちろんこれは推論である。腕が下がった理由がどこにあるのか、スライダーが落ちなくなったこととどうつながるのかまでは、Statcastには写らない。だが「球速も回転も戻ったのに空振りだけが戻らない」という不可解さに対して、いま計測値の中で筋の通る説明はこれだけである。
2年前は、9月に戻ってきた
ディアスは2023年に膝を痛め、シーズンを丸ごと棒に振っている。翌2024年は月ごとに数字が激しく揺れた。
| 2024年 | 空振り率 | スライダーの空振り率 |
|---|---|---|
| 6月 | 30.8% | 35.7% |
| 7月 | 36.7% | 29.3% |
| 8月 | 33.8% | 32.4% |
| 9月 | 44.3% | 61.4% |
スライダーの空振り率は、夏のあいだ3割前後を上下していた。それが9月、61.4%まで跳ね上がる。この月のディアスは13登板14回で26三振を奪い、月間防御率1.93。最後のひと月で、かつての支配的な姿を取り戻していた。
大怪我明けの守護神が、シーズン終盤に戻ってきた実例がここにある。
ただし条件は同じではない。2024年は4月にいったん空振り率40.0%まで戻し、そこからまた落ちている。9月まで安定しなかった。しかもシーズン防御率は3.52。1.63という本来の数字に帰ってきたのは、翌2025年である。丸ごと1年かかっている。
そして2024年は、最も悪い月でも空振り率は3割あった。いまの23.0%は、あの年のどの月よりも低い。落ちている場所が、2年前より深い。
ポストシーズンに間に合うのか
ドジャースの残り試合は40。復帰後は16日で7登板だから、同じペースなら18〜20回のマウンドが残る。2024年9月に立て直したときは、13登板だった。回数だけなら足りている。
直すべき対象は、球速でも制球でもない。腕の位置と、そこから生まれる2球種の落差である。フォームの微調整は、球速を上げることより時間がかかることもあれば、ある日突然はまることもある。2024年9月のディアスがそうだった。
13日、佐々木朗希は6回を2失点で投げ切り、勝利投手の権利を持ってベンチに下がった。その勝ちを消したのは、球速も回転も前年に戻った守護神の、たった2アウト分の投球だった。
戻すべきものは、もう見えている。あとは10月までに間に合うかどうかだ。
この記事の数字について
- 出典はMLB公式のStats APIとBaseball Savant。2026年8月13日(現地時間)の登板終了時点で取得した。シーズン進行中のため変動する
- 8月13日のブルワーズ戦は、ディアスが2点リードの9回に登板して0回2/3で3失点、敗戦投手。佐々木朗希は6回2失点で降板し勝利投手の権利を持っていた。打者ごとの球種・球速・三振の種類は1球ごとのプレーバイプレーで確認した(2つの三振はいずれも見逃し)。3点目の得点経緯は次の投手の登板中のため、本文では触れていない
- 「直近4登板で3度目のセーブ失敗」は8月7日・8日・13日。8月10日はセーブを記録している
- ドジャースのワールドシリーズ制覇は2024年(ヤンキースに4勝1敗)と2025年(ブルージェイズに4勝3敗)。今季は3連覇がかかる
- 「怪我前」は2026年3月27日から4月19日までの7登板、「復帰後」は7月29日以降の7登板。離脱は3か月あまりに及んだ
- 空振り率はスイングに対する空振りの割合。ファウルはスイングに含み、空振りには含まない。K%は対戦打者に対する三振の割合で、算出は2026年通算(怪我前と復帰後には分けていない)
- 「ボール球」はStatcastのゾーン区分で1〜9以外を指す。「ボール球を振らせた率」はボール球に対するスイングの割合
- 球速・変化量・リリース位置は、Statcastの原データ(マイル・インチ)をメートル法に換算して表記した。横の曲がり幅は絶対値。原データでは右投手のフォーシームは負の値になる
- 「縦の変化量」はStatcastの
pfx_z。重力だけで落下した場合を基準に、そこからどれだけ浮き上がったかを示す。値が大きいほど落ちにくく、小さいほど素直に落ちる。落下量そのものではない - 他投手との比較は、いずれもフォーシームのシーズン平均。ゲリット・コールは2024年、山本由伸は2026年。ディアスの140センチ・30.5センチは2026年通算(怪我前と復帰後を合わせた150球)の値で、本文の表にある「復帰後」80球の29.0センチとは集計範囲が異なる
- 球種別の空振り率と使用率は、球種が判別できた投球を分母にしている。復帰後は135球のうちフォーシーム80球・スライダー51球
- 2024年の空振り率は本文の表で6月以降のみ示した。3月は30.0%(18球)、4月40.0%、5月36.1%
- 復帰後の135球は、2025年の1067球に比べて母数が小さく、数字は動きやすい
- 「18〜20回のマウンド」は、復帰後16日で7登板というペースを残り40試合に当てた当サイトの試算
- 与四球・K%・WHIPは2026年通算の値。怪我前と復帰後に分けた与四球は9イニングあたり7.50個と4.76個で、本文では通算に統一した
- リリースの高さは、フォーシームの1球データを月ごとに平均した。2025年は3月151.1・4月147.8・5月146.8・6月146.8・7月147.8・8月144.3・9月146.1センチ。2026年は3月142.0・4月140.0・7月138.9・8月138.7センチ。球種によってリリース位置は異なり、スライダーはフォーシームより数センチ高い
- スライダーの球速は2025年の143.4キロに対し復帰後144.5キロ。本文の「1キロ速くなった」はこの差を指す
- 「腕が下がったからストレートが浮かなくなり、スライダーとの差が縮んだ」は当サイトの推論である。リリースの低下と変化量の変化はデータに出ており、リリースの高さと縦の変化量には他の投手でも同じ向きの傾向が見えるが、比較したのは3投手にすぎない。腕が下がった理由と、スライダーが落ちなくなった原因はデータからは特定できない。リリースの高さは腕の角度そのものではなく、身長や踏み込みの影響も受ける
