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ニュース2026-09-17千賀滉大メッツセーブフォークStatcast打順一巡MLB

千賀滉大0勝9敗で7セーブ 2巡目に半分になる数字

千賀滉大0勝9敗で7セーブ 2巡目に半分になる数字

メッツの千賀滉大が9月16日(日本時間)のオリオールズ戦で1点リードの9回を守れず、守護神を任されて8度目の機会にして初めてセーブを失敗した。今季は29試合で0勝9敗7セーブ、防御率7.05。2026年にメジャーで登板した855人のうち、未勝利のまま9敗を喫しているのは千賀ひとりで、日本人投手の全シーズンを走査しても未勝利での9敗は例がない。先発8試合を打席ごとに数え直すと、打線1巡目に31.9%あった三振の割合は2巡目で16.9%へ落ち、本塁打は3本から6本へ増えていた。1イニングだけ投げるいまの千賀の三振率は31.7%で、先発だったころの1巡目とほぼ重なる。

Baseball Archives 編集部2026-09-17データ出典 MLB Stats API

崩れていたのは、球そのものではなかった――。メッツの千賀滉大は9月16日(日本時間)の本拠地オリオールズ戦で1点リードの9回を任され、1死からピート・アロンソに同点本塁打を浴びた。守護神に座って8度目の機会で、初めての失敗。今季はここまで29試合で0勝9敗7セーブ、防御率7.05。2023年に12勝と202奪三振でメジャー1年目を投げ抜いた右腕が、4年目の9月に入ってなお勝ち星をひとつも持っていない。ただ、打席をひとつずつ数え直すと、球威の衰えとはまったく別の線が浮かんだ。

その0勝9敗は、今季のメジャーで千賀だけが持っている。2026年に1試合以上登板した投手は855人。未勝利のまま9敗しているのはこの右腕ひとりで、次に多いゲイブリエル・ヒューズが0勝8敗だった。日本人投手61人の全シーズンを走査しても、未勝利で9敗した例はない。これまで最も多かったのは佐々木主浩の2001年で、0勝4敗ながら45セーブを挙げていた。勝ち星の欄が空いたまま敗戦だけが二桁に近づく投手は、記録のうえでも居場所がない。

ところが、その9敗のうち7つは6月までについていた。開幕からの7先発で6つ、6月28日の救援で1つ。この7先発だけを取れば0勝6敗、防御率10.08。6月24日(日本時間25日)、メッツは千賀を先発ローテーションから外した。

ブルペンへ移してすぐ直ったわけではない。7月18日までの救援5試合は、6月28日の5回を筆頭に4試合が複数イニングにまたがり、13回を投げて防御率6.23。7月末には一度だけ先発にも戻している。数字がはっきり動いたのは、8月4日を境に登板が1イニングで収まるようになってからだった。10日のブレーブス戦でメジャー初セーブを挙げ、8月4日以降の16試合は15回1/3で自責点4、防御率2.35。先発8試合の9.66と並べると、同じ年の同じ投手が残した数字とは思えない。

打者が2度目に立ったとき、三振が半分になっていた

その落差がどこで生まれていたのかは、先発8試合の596球を打線の巡り目で割り直すと見えてきた。打者と初めて顔を合わせた1巡目は72打席。千賀は31.9%(23/72)を三振に打ち取り、本塁打は3本に抑えていた。ところが同じ打者が2度目に立った2巡目の65打席では、三振が16.9%(11/65)へ15.0ポイント落ち、本塁打は6本へ増えた。スイングに対する空振りも32.1%(43/134)から19.8%(22/111)へ12.3ポイント落ちた。ゾーンの外に手を出させた割合も27.7%(44/159)から22.1%(29/131)へ5.6ポイント落ちている。“2巡目の壁”は、三振と一発の両方に同じ向きで出ていた。

もっとも、2巡目に成績が落ちること自体は、どの先発投手にも起きた。そこで、同じやり方で2026年の日本人先発3人を数えてみた。山本由伸は29.4%(72/245)から25.2%(61/242)へ4.2ポイント。今永昇太は28.2%(74/262)から24.9%(64/257)へ3.3ポイント。佐々木朗希は25.5%(53/208)から19.8%(41/207)へ5.7ポイント。3人とも同じ向きに落ちているが、最も大きい佐々木でも5.7ポイントにとどまった。千賀の15.0ポイントは、その2.6倍。特異なのは落ちることではなく、落ち方の大きさのほう。

そして、1イニングだけ投げるいまの千賀は、その“1巡目の千賀”とほとんど同じ位置にいた。8月4日以降の16試合で対戦した63打者のうち、三振に打ち取ったのは20人。割合にして31.7%(20/63)。先発時代の1巡目の31.9%とは0.2ポイントしか違わない。四球の割合も先発時の16.0%(24/150)から9.5%(6/63)へ、6.5ポイント減った。1イニングだけ投げる起用は、崩れる前の千賀だけを“切り出す”形になっている。

7つあった持ち球が、2つで9割に

切り出しは、投げる球のほうにも表れた。先発8試合では4シーム・フォーク・カッターを軸に7球種を使っていたが、8月4日以降の249球は4シーム57.4%(143/249)とフォーク34.5%(86/249)の2つだけで92.0%(229/249)を占める。カッターは8球しか残っていない。4シームの平均も先発時の154.6キロから155.6キロへ上がり、最も速い1球は、先発時の最速159.6キロを上回る161.4キロ。そして絞った効果がいちばん出たのが、そのフォークだった。スイングされた42球のうち、26球が空振り。61.9%(26/42)は、先発1巡目の48.1%(13/27)をも上回る高さ。

その2球種で締めた回が、1週間前にあった。9月9日(日本時間)のマーリンズ戦では、3点リードの9回に4シームを二塁打2本で捉えられ1点を失った。ところが、そこから最後の10球をすべてフォークで通し、2三振で締めている。アンディ・グリーン暫定監督はこの判断を「相手が直球をうまく捉えていると認識すると、フォークボールに切り替え、それを10球連続で投げて勝負した」と振り返り、「それはまさに試合を読む力だ」と評した(THE DIGEST、9月11日)。

ただし、63打者・249球という母数で結論を固めることはできない。1イニングだけ投げれば数字がよくなること自体は、救援に回った投手について一般に言われてきた。8月4日以降の被本塁打も2本あった。そのうち1本が、9月16日の同点弾。それでも、先発時の1巡目と救援時の三振率が0.2ポイントの差で重なり、フォークの空振り率が両方で高く出た事実は残る。別々に数えた2つの区間が、同じ場所に着地している。

13球のフォークと、ゾーンに入った2球

その9月16日、千賀は9回に17球を投げ、うち13球がフォークだった。ストライクゾーンに入ったのは、そのうち2球だけ。残りの11球はすべてゾーンの外へ落として振らせにいった。最後の2打者からは9球で5つの空振りを奪い、連続三振で締めている。同点弾になったのは、そのゾーンに入った2球のうちの1球だった。2ボール0ストライクから投じた132.8キロのフォークが、ゾーン下段の真ん中に残った。アロンソはこれを、打球速度176.4キロ、飛距離126.2メートルで左中間へ運んだ。試合はメッツが延長11回に5-7で落としている。ゾーンの外へ落とした11球が空振りを5つ生み、ゾーンに入った2球のうち1球が一発になった。それでも、崩れていたのは球のほうではなかった。

故障で離脱中の守護神デビン・ウィリアムズは、千賀の投球を「これ以上、何を望むというのか」と評した。「ブルペンの終盤にいて欲しい」と、来季の起用にまで踏み込んでいる(ベースボールチャンネル、9月15日)。ところが、当の千賀は先発への復帰を望んでいる。グリーン暫定監督も「千賀はとても率直に、先発したいと話している」と明かしている。そのうえで「チームが本当に必要としている役割に移り、そこで力を発揮するために犠牲を払っている姿勢は素晴らしい」と続けた。周囲が評価しているのは、本人が望んでいない場所での働きぶり。

開幕からの7先発は「打線が2巡したところで崩れた」。回またぎで投げた6月末からの救援は「6.23でまだ崩れていた」。そして1イニング限定になってからは「セーブ機会を7度守り、8度目に落とした」。手札を2つに減らしたから戻ったのか。対戦が1巡で終わるから戻ったのか。それとも、その両方なのか――。

もっとも、1イニング限定の数字が翌年の先発を保証するわけではない。ただ、4シームの平均球速を前年より2.2キロ上げていた投手が、先発8試合では0勝7敗・防御率9.66に沈んだ。それが、9回の1イニングに絞ってから2.35に戻っている。「なぜ打たれるのか」を問う段階は、もう過ぎている。問いは「どこが悪いのか」から、「どちらの持ち場で使うのか」へ移った。

メッツは69勝82敗でポストシーズン進出が消え、残りは11試合。0勝9敗という数字は、この11試合ではもう動かないかもしれない。来季もう一度先発に戻して2巡目を試すのか。9回だけを任せて“1巡目の千賀”を切り出しつづけるのか。今季の9.66と2.35は、その二択を分けるための材料。33歳をどこに置くかを決めるのは、来季もチームのほうだ。


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