この記事のポイント
- 申請は11月1日〜12月15日、交渉は45日間。まとまらなければ日本の球団に戻る
- 譲渡金は契約総額の15〜20%。マイナー契約なら契約金の25%
- 山本由伸の譲渡金は約72億円、佐々木朗希は約2.5億円。差を生んだのは「25歳ルール」
ポスティングとは、日本の球団が所属選手のメジャー移籍を認め、MLBの全30球団と交渉させる制度だ。 プロ何年目からという年数の条件は設けられておらず、球団が認めれば使える。
申請できるのは毎年11月1日〜12月15日、交渉できるのは45日間。契約がまとまると、メジャーの球団は日本の球団に「譲渡金」を払う。額は契約総額の15〜20%で、マイナー契約なら契約金の25%になる。

今の形の制度は、2018〜19年のオフから使われている。2026年1月までに、村上宗隆(ヤクルト→ホワイトソックス)、今井達也(西武→アストロズ)、岡本和真(巨人→ブルージェイズ)がこの制度で海を渡った。今オフも何人かの名前が挙がっている。
ポスティングの期限はいつ?
日本の球団が選手をポスティングできるのは、毎年11月1日から12月15日まで。MLBが全30球団に通知すると、選手は45日間、どの球団とも交渉できる。
45日以内に契約がまとまらなければ、選手は日本の球団に戻り、次のシーズンも日本でプレーする。もう一度ポスティングされるのは、翌年のオフまで待たなければならない。
期限は分単位で決まっている。2025年オフの村上宗隆は、交渉の締め切りが12月22日の午後5時(米東部時間)だった。ホワイトソックスとの契約は、その前日の21日に発表された。
譲渡金はいくら?
譲渡金は、メジャー球団が日本の球団に払うお金だ。選手本人の年俸とは別に払う。額は、保証された契約総額に応じて段階的に決まる。
| 契約総額のうち | 譲渡金の率 |
|---|---|
| 2500万ドルまでの部分 | 20% |
| 2500万ドル超〜5000万ドルの部分 | 17.5% |
| 5000万ドルを超える部分 | 15% |
| マイナー契約 | 契約金の25% |
所得税と同じく、金額の層ごとに率をかけて足す。岡本和真の4年6000万ドルなら、最初の2500万ドルの20%(500万ドル)、次の2500万ドルの17.5%(437.5万ドル)、残り1000万ドルの15%(150万ドル)。合わせて1087.5万ドル、約17億円が巨人に入った。
契約が大きくなるほど率は15%に近づくが、15%を下回ることはない。12年3億2500万ドルの山本由伸では、譲渡金は5062.5万ドル(約72億円)、総額の15.6%だった。2年3400万ドルの村上宗隆は657.5万ドル(約10億円)で、19.3%にあたる。
出来高や年俸の上積み、オプションの年が実際に発生した場合は、その15%が追加で日本の球団に払われる。最初の譲渡金には含まれない。
2017年までの旧制度では、日本の球団が譲渡金を決め、上限は2000万ドルだった。2017年12月にエンゼルスと契約した大谷翔平はこの旧制度で移籍し、日本ハムには上限の2000万ドルが払われている。
ポスティングは何年目から使える?
ポスティングには「プロ何年目から」という年数の条件はない。年数の条件は設けられておらず、選手が希望し、所属球団が認めれば申請できる。逆に言えば、球団が認めなければ使えない。
ただし、年齢と年数で契約の中身が大きく変わる。MLBの労使協定では、25歳未満か、プロ6シーズン未満の外国人選手は、国際ボーナスプール(契約金の枠)の制限を受ける。 契約は、この枠に縛られたマイナー契約になる。これが「25歳ルール」と呼ばれるものだ。
2025年1月にドジャースと契約した佐々木朗希は23歳で、このルールに当たった。契約はマイナー契約で、契約金は650万ドル(約10億円)。ロッテへの譲渡金は、その25%の162.5万ドル(約2.5億円)だった。
同じドジャースの山本由伸は、ポスティングの時点で25歳、オリックスで7シーズンを過ごしていた。だから枠に縛られず、12年3億2500万ドルを結べた。オリックスの譲渡金は約72億円で、ロッテの約30倍。その差は、このルールから生まれている。
海外FAとの違いは?
海外FA(フリーエージェント)は、1軍に登録された日数で決まる権利だ。1シーズン145日以上の登録を1年として、9シーズンに達すると取れる。権利を取れば、球団の同意なしにメジャーを含むどの球団とも契約できる。
違いは2つある。海外FAは球団が反対しても使えるが、ポスティングは球団が認めないと使えない。また海外FAで移籍すると、日本の球団に譲渡金は入らない。2022年オフにメッツへ移った千賀滉大は海外FAを使ったので、ソフトバンクに譲渡金は払われていない。
日本の球団から見ると、海外FAを取られる前にポスティングで送り出せば、譲渡金を受け取れる。選手が9シーズンを待たずにメジャーへ行けるのも、この制度があるからだ。
ポスティングで移籍した日本人の契約と譲渡金
主な日本人選手の契約と譲渡金を、契約が合意した時期の順に並べた。円は合意した日のレートで換算している。
| 選手 | 契約時期 | 移籍先 | 契約 | 譲渡金 | ドル建て(契約・譲渡金) |
|---|---|---|---|---|---|
| 大谷翔平 | 2017年12月 | エンゼルス | マイナー契約(契約金約2.6億円) | 約23億円(旧制度) | 契約金231.5万・2000万 |
| 鈴木誠也 | 2022年3月 | カブス | 5年約101億円 | 約17億円 | 8500万・1462.5万 |
| 吉田正尚 | 2022年12月 | レッドソックス | 5年約123億円 | 約21億円 | 9000万・1537.5万 |
| 山本由伸 | 2023年12月 | ドジャース | 12年約462億円 | 約72億円 | 3億2500万・5062.5万 |
| 佐々木朗希 | 2025年1月 | ドジャース | マイナー契約(契約金約10億円) | 約2.5億円 | 契約金650万・162.5万 |
| 村上宗隆 | 2025年12月 | ホワイトソックス | 2年約53億円 | 約10億円 | 3400万・657.5万 |
| 今井達也 | 2026年1月 | アストロズ | 3年約85億円 | 約16億円 | 5400万・997.5万 |
| 岡本和真 | 2026年1月 | ブルージェイズ | 4年約94億円 | 約17億円 | 6000万・1087.5万 |
今井の契約には出来高があり、最大6300万ドル(約99億円)まで増える。
鈴木誠也は2021年11月にポスティングされたが、交渉の途中でMLBがロックアウト(労使交渉の決裂による締め出し)に入り、契約は翌年3月にずれ込んだ。
今オフのポスティング候補は?
ESPNのジェフ・パッサン記者は9月、西武の平良海馬、阪神の佐藤輝明、日本ハムの伊藤大海が今オフにポスティングされると見込み、3人とも12月1日までに契約すると予想した(MLBトレードルーマーズ、9月10日)。平良は「11月上旬」のポスティングが見込まれるという。
ただし、球団が正式に認めたという発表は、10月15日時点で確認できていない。阪神は1月、佐藤のポスティングを認めない方針だと報じられ(日刊ゲンダイ、1月29日)、9月の時点でも結論は出ていないと伝えられている(J-CASTニュース、9月9日)。
今オフは日程にも注意がいる。MLBの労使協定は12月1日に切れ、ロックアウトに入れば交渉が止まる。ポスティングを早めに済ませる球団が出てきそうだ。まずは11月1日、申請の受付開始に誰の名前が出るかを見たい。
関連記事
- MLBのロックアウトとは? 12月1日に協定が切れると何が止まるか
- 今井達也の四球とブルペン配置換え
- 村上宗隆と岡本和真、同じ24本の中身
- 新人王2026 村上宗隆・岡本和真の本塁打とWARを4人で比較
- 鈴木誠也のメジャー5年間の記録とFA
- 日本人選手のMLB1年目の記録
- 今井達也の成績・月別データ
- 山本由伸の成績・球種データ
- 佐々木朗希の成績
この記事の数字について(出典・集計方法)
- 交渉期間(45日)、譲渡金の段階式、マイナー契約の25%、出来高・オプションの15%、旧制度の上限2000万ドル、25歳・6シーズンの条件:MLB.com 用語集「Japanese Posting System」
- 申請期間(11月1日〜12月15日)と45日:AP通信(FOXスポーツ配信、2025年11月10日)
- 海外FAの条件(145日で1シーズン、9シーズン):NPB「フリーエージェントについて」
- 契約と譲渡金:大谷翔平はMLBトレードルーマーズ(2017年12月)、鈴木誠也はBaseball-Reference、吉田正尚はボストン・グローブ(2022年12月8日)、山本由伸はMLB.com(2023年12月27日)とCBSスポーツによる
- 佐々木朗希はAP通信(2025年1月22日)、村上宗隆はAP通信(ABCニュース配信、2025年12月21日)とCBSスポーツ、今井達也はAP通信(NBCニュース配信)と時事通信、岡本和真はAP通信(WTOP配信、2026年1月3日)による
- 譲渡金はすべて段階式の計算と一致することを確かめた。今井の譲渡金は、AP通信の配信先によって967.5万ドルとする版があるが、段階式で計算すると997.5万ドルになるため、こちらを載せた
- 円は米連邦準備制度理事会(FRB)が公表するニューヨーク市場のドル円レート(FRED)で、合意が報じられた日(休場日なら翌営業日)の値を使った。大谷2017年12月8日113.55円、鈴木2022年3月16日118.48円、吉田2022年12月7日136.57円、山本2023年12月21日142.16円、佐々木2025年1月17日156.30円、村上2025年12月22日156.93円、今井2026年1月2日156.72円、岡本2026年1月5日156.32円
- 今オフの候補は報道によるもので、当サイトが取材したものではない:MLBトレードルーマーズ(2026年9月10日)、日刊ゲンダイ(2026年1月29日)、J-CASTニュース(2026年9月9日)
- 年齢・シーズン数は契約時点。千賀滉大の海外FAでの移籍は、譲渡金の対象外のため表に入れていない
数字はすべて MLB Stats API ほかの実データです。データの出典と方針