ア・リーグの新人王争いは、本塁打で比べるかWARで比べるかで上位が入れ替わる。WARは、控えクラスの選手が出た場合よりチームの勝ちを何勝増やしたかを示す数字だ。本塁打はホワイトソックスの村上宗隆が35本、ブルージェイズの岡本和真が33本で、メジャーの新人の1位と2位。レギュラーシーズンは9月27日に終わり、数字は出そろった。
新人王は、全米野球記者協会(BBWAA)の記者の投票で決まる。各球団の担当記者から2人ずつ選ばれた30人が、1位から3位までを書いて投じる。1位は5点、2位は3点、3位は1点。合計点の最も多い選手が受賞する。
投票はポストシーズンが始まる前に締め切られている。村上は10月3日の地区シリーズ第1戦で、ガーディアンズの新人左腕パーカー・メシックから先制2ランを放った。新人王を争う相手からの一発だが、票には入らない。
村上宗隆:本塁打35本は新人でメジャー最多、打率は.207
村上の35本塁打は、新人に限らずア・リーグ全体でも5位に入る数字だ。長打率.478とOPS.825は、規定打席に届いたア・リーグの新人7人の中で最も高い。OPSは出塁率と長打率を足した数字で、打者としての総合力をざっくり示す。
四球も92個選び、出塁率は.347。5月30日に右太もも裏を痛めて負傷者リストに入り、復帰は7月10日だった。約6週間を欠き、出場は127試合にとどまっている。
弱点もはっきりしている。打率.207は、規定打席に届いたア・リーグの新人7人の中で最も低い。三振196個は、ア・リーグの新人で最も多かった。553打席のうち、3打席に1打席は三振で終わった計算になる。
岡本和真:156試合に出て新人最多の92打点
岡本は156試合に出場し、33本塁打、92打点。打点はア・リーグの新人で最も多く、塁打の合計257もマクゴニグルの260に次ぐ2位だった。主に三塁を守りながら、シーズンを通して打線に入り続けた。
一方で、打率は.232、出塁率は.310にとどまる。四球は59個で、村上より33個少ない。三振183個は、村上に次いでア・リーグの新人で2番目に多かった。
マクゴニグル:出塁率.376、四球と三振がほぼ同じ数
本塁打以外の数字では、村上と岡本を上回る新人が2人いる。1人目は、タイガースの22歳の内野手ケビン・マクゴニグルだ。本塁打は18本だが、打率.278、出塁率.376。168安打と97得点は、どちらもア・リーグの新人で最多だった。
選んだ四球は95個、三振は100個。三振の数が村上の約半分で、四球の数はほぼ同じ。遊撃と三塁を守り、盗塁も12個決めた。707打席は、ア・リーグの新人で最も多い。
メシック:防御率2.56はリーグ全体でも3位
もう1人は、ガーディアンズの25歳の左腕パーカー・メシックだ。先発32試合で186回1/3を投げ、12勝9敗、防御率2.56、193奪三振。勝利、投球回、奪三振はいずれもア・リーグの新人で最も多い。
防御率は、規定投球回に届いたア・リーグの投手23人の中で3位だった。新人だけでなく、リーグ全体の先発の中でも上位に入る。WHIPは1.06。1イニングあたりに出した走者の数を示す数字で、1イニングに1人ほどしか走者を出さなかったことになる。
WARで並べると、順番が入れ替わる
4人を同じ物差しで比べる数字に、WARがある。打撃・走塁・守備(投手なら投球)をまとめ、控えクラスの選手が出た場合と比べてチームの勝ちを何勝ぶん増やしたかを示す指標だ。計算の仕方は2つのデータサイトで少し違うので、両方を並べる。
| 選手 | FanGraphs版 | Baseball-Reference版 |
|---|---|---|
| マクゴニグル(タイガース) | 5.4 | 7.1 |
| メシック(ガーディアンズ) | 4.9 | 6.3 |
| 岡本和真(ブルージェイズ) | 3.0 | 2.5 |
| 村上宗隆(ホワイトソックス) | 2.9 | 2.3 |
どちらのサイトでも、ア・リーグの新人の1位はマクゴニグル、2位はメシックだった。本塁打で1・2位の村上と岡本は、WARでは2人の半分から3分の1ほどにとどまる。
村上の打撃そのものは高く評価されている。FanGraphsで打撃と走塁を点に換算すると、村上は平均的な打者より17.4点(約1.7勝分)多く得点を生んだ計算で、岡本の6.5点を大きく上回る。それでもWARが伸びないのは、守る位置が一塁中心だからだ。
WARは、守るのが難しい位置ほど上積みし、易しい位置ほど差し引く。村上はこの守備位置の調整だけで、9.5点(約1勝分)のマイナスがついた。さらに約6週間の欠場で、出場そのものが少ない。岡本は三塁が中心で、守備位置の調整はわずかにプラス。代わりに、出塁率.310が打撃の評価を押し下げている。
2024年は投手が5点差で受賞
記者の投票は、WARの順番どおりになるとは限らない。2024年のア・リーグでは、ヤンキースの投手ルイス・ギルが15勝7敗、防御率3.50で受賞した。24本塁打のオリオールズ、コルトン・カウザーとの差はわずか5点。1位票は15対13だった。
この年、Baseball-Reference版のWARは、ギルの2.9に対してカウザーは2.8。2人より高い3.6だったレッドソックスのウィルヤー・アブレイユは、6位に終わっている。本塁打、勝利と防御率、WARのどれを重く見るかは、記者1人1人で違う。
受賞すれば日本人5人目、2018年の大谷以来
日本人の新人王は、1995年の野茂英雄(ナ・リーグ)、2000年の佐々木主浩、2001年のイチロー、2018年の大谷翔平の4人。村上か岡本が選ばれれば5人目で、大谷以来8年ぶりになる。
結果は例年どおりなら11月上旬〜中旬に発表される。見どころは、1位票が4人にどう割れるか。2位と3位の票にも点がつくため、1位票が少なくても上位に入れる。35本のパワーか、156試合に出続けた岡本の92打点か、それとも出塁や投球の安定か。30人の記者が何を重く見たかが、点数の内訳に出る。
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この記事の数字について(出典・集計方法)
- 成績はMLB Stats APIから取得した2026年レギュラーシーズン(
gameType=R)の最終成績。ア・リーグの新人の範囲は、Stats APIのplayerPool=ROOKIES&leagueId=103が返した選手とした。新人の本塁打は、同じ条件の両リーグ集計でも村上35本、岡本33本、サル・スチュワート(レッズ)32本の順。数字は、リーグ全体の一覧と選手ごとの成績(people/{id}/stats)の2つのクエリで取り直し、一致を確認した。 - 主な成績:村上は127試合・553打席・454打数94安打・35本塁打・77打点・92四球・196三振、打率.207、出塁率.347、長打率.478。岡本は156試合・636打席・568打数132安打・33本塁打・92打点・59四球・183三振、打率.232、出塁率.310、長打率.452。マクゴニグルは156試合・707打席・605打数168安打・18本塁打・72打点・97得点・95四球・100三振・12盗塁、打率.278、出塁率.376、長打率.430。メシックは32試合(すべて先発)・186回1/3・12勝9敗・防御率2.56・193奪三振・49四球・WHIP1.06。
- 「規定打席に届いたア・リーグの新人7人」は、502打席(3.1×162試合)以上の村上、岡本、マクゴニグル、カーター・ジェンセン(ロイヤルズ、27本塁打)、チェース・ディローター(ガーディアンズ)、トラビス・バザーナ(ガーディアンズ)、サム・アントナッチ。OPSは村上.825、ディローター.820、マクゴニグル.806の順。
- 「3打席に1打席は三振」は、村上の三振196を打席553で割った35.4%による。ア・リーグ全体の本塁打順位(村上は5位)と、規定投球回に届いた23人の防御率順位(メシックは3位)は、Stats APIの
playerPool=AllとplayerPool=Qualifiedによる。 - 村上の負傷者リスト入り(5月30日、右ハムストリングの肉離れ)と復帰(7月10日)は、Stats APIの取引記録(transactions)による。
- WARは2026年10月5日に各サイトで確認した値。FanGraphs版(fWAR)はア・リーグの新人で、マクゴニグル5.4、メシック4.9、ペイトン・トール(レッドソックス)4.1、ジェンセン3.7などと続き、岡本3.0、村上2.9。Baseball-Reference版(bWAR)は、マクゴニグル7.1、メシック6.3、ウォルバート・ウレーニャ(エンゼルス)3.8、トリスタン・ピーターズ(ホワイトソックス)3.6などで、岡本2.5、村上2.3。両サイトの計算式の違い(守備や投手の評価の方法)で値がずれる。
- 「打撃と走塁で17.4点」「守備位置の調整で9.5点のマイナス」は、FanGraphsのOffense(打撃+走塁)とPositional(守備位置の調整)の値。岡本のOffenseは6.5、Positionalは1.0、マクゴニグルのOffenseは26.6。いずれも得点に換算した値で、およそ10点が1勝にあたる。
- 投票の方法(各都市の記者2人、1位から3位まで5・3・1点、投票はポストシーズン開始前)は、BBWAAの公式サイトの投票FAQによる。2025年の発表は新人王が11月10日だった(BBWAA公式サイト)。2026年の発表日は、この記事の時点で確認できなかった。
- 2024年のア・リーグ新人王の投票結果(ギル106点・1位票15、カウザー101点・1位票13、アブレイユ11点で6位)と各選手のbWARは、Baseball-Referenceの2024年アワード投票ページによる。日本人の新人王4人も同サイトの受賞者一覧で確認した。
- 村上の地区シリーズ第1戦の本塁打は、MLB Stats APIの試合データ(
gameType=D)による。
