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松井裕樹

松井裕樹パドレスオプトアウト

松井裕樹はオプトアウトするか 防御率1.83、米記者の予想は割れる

2026年10月9日(日本時間) Baseball Archives 編集部 データ出典 MLB Stats API

この記事のポイント

  1. 防御率1.83は自己最高。50回以上投げた救援左腕でメジャー最少
  2. 左打者にスライダーを倍近く投げ、その球が遅く、よく落ちるようになった
  3. 残り2年1350万ドルを捨てて市場に出るか。米記者の予想は割れている

パドレスの松井裕樹投手は今季、防御率1.83で自己最高だった。オフには、残り2年1350万ドル(約21億円)の契約を破棄する権利がある。この権利をオプトアウトといい、使えばフリーエージェント(FA)として他球団とも交渉できる。

ポストシーズンでも5試合で4回2/3を投げて自責点0だったが、パドレスは7日(日本時間8日)、地区シリーズでブルワーズに1勝3敗で敗れ、今季を終えた。

松井裕樹はオプトアウトするか 防御率1.83、米記者の予想は割れる

メジャー3年目の左腕は、この成績を手に市場へ出るのか、パドレスに残るのか。米メディアの予想は割れている。

防御率1.83は自己最高

今季はレギュラーシーズン54試合に救援で登板し、64回を投げて5勝1敗1セーブ11ホールド、防御率1.83だった。メジャー1年目の2024年は3.73、2年目の昨季は3.98で、3年目で自己最高の数字を残した。被打率.171も3年間で最も低い。

春はキャンプで左脚の付け根を痛め、出場予定だったWBCを辞退した。負傷者リストで開幕を迎え、今季の初登板は5月8日。出遅れながら、投球回は3年間で最も多くなった。

救援だけで50回以上投げた投手は、メジャーに87人いる。松井の防御率はその中で7位、ナ・リーグでは40人中3位だった。左投手24人に限ると最も低い。2位は1.92のアロルディス・チャップマン(レッドソックス)だった。

日本人の救援投手と比べても上位に入る。救援だけで50回以上投げた日本人のシーズンは、これまでに41ある。1.83はその中で5番目に低く、上には2013年の上原浩治(1.09)、2007年の斎藤隆(1.40)、2003年の長谷川滋利(1.48)、2004年の大塚晶則(1.75)がいる。

左腕に限れば、日本人で最も低い。これまでは、2007年に岡島秀樹がレッドソックスで記録した2.22だった。

左打者とスライダー

何が良くなったのか。まず目立つのは、左打者の抑え方だ。昨季は左打者にOPS.849と打ち込まれていた。OPSは出塁率と長打率を足した数字で、打者の総合力を表す。今季はこれが.466まで下がり、被打率は.263から.144になった。

球団も、松井を左打者に当てるようになった。対戦した打者のうち左打者の割合は、昨季の41.9%(114/272)から、今季は51.9%(135/260)に増えた。

その左打者に増やしたのがスライダーだ。左打者に投げた球のうちスライダーは、昨季の23.5%(105/447)から今季は41.2%(225/546)。5球に2球を超えた。

球を増やしただけではない。スライダーそのものが変わった。平均球速は昨季の139.4キロから136.6キロに落ちた。148キロ前後の直球との差は、8.7キロから11.3キロに広がった。

落ち方も変わった。Statcastは1球ごとに「縦の変化量」を測っている。回転の影響で、重力だけの場合より落ち方がどれだけ小さくなったかを示す数字で、小さいほどよく落ちる。松井のスライダーは昨季の17.6センチから7.3センチになった。

この変化はシーズンが進むにつれて大きくなった。5月の縦の変化量は12.0センチ、9月は0.6センチ。回転で落ち方が抑えられることがほとんどなく、重力のままに落ちる球になっていた。

打たれても強い打球にならない

結果は打球に出た。スライダーを前に飛ばされた打球の平均速度は、昨季の147.4キロから135.7キロに落ちた。打球速度152.9キロ以上の強い打球の割合も、39.4%(13/33)から23.4%(11/47)に下がっている。

スライダーで打席が終わった場面の被打率は、昨季の.273(33打数9安打)から.143(63打数9安打)になった。空振りの割合も21.8%(17/78)から33.1%(45/136)に上がった。

なぜ打ちにくくなったのか。直球と同じ腕の振りから、約11キロ遅い球が、そのまま落ちてくる。打者は直球のつもりで振り始めると、タイミングも高さも合わない。芯を外された打球が増えたとみられる(計測値からの推論)。

全体でも、打球の質は下がった。前に飛ばされた打球の平均速度は142.1キロから136.9キロに、強い打球の割合は37.3%(66/177)から30.5%(47/154)になった。

四球の多さは残った

一方で、課題も残った。与えた四球36(故意四球3を含む)は3年間で最も多い。9回あたりでは5.06個になり、対戦打者の13.8%(36/260)に四球を与えた計算だ。23個は右打者に与えている。

打球が安打になる割合も、今季は低かった。本塁打を除き、前に飛んだ打球が安打になった割合は.204(30/147)で、2024年の.248、昨季の.259を大きく下回る。弱い打球が増えた影響もあるが、運にも左右される数字で、来季も同じ水準が続くとは限らない。

残り2年1350万ドルをどうするか

松井は2023年12月、パドレスと5年総額2800万ドル(当時のレートで約40億円)で契約した。契約時の報道によると、年俸は今季が575万ドル、来季が650万ドル、2028年が700万ドル。今季後と来季後に、残りを破棄できる。

今季後の権利には、2024〜25年について2つの条件があった。トミー・ジョン手術を受けていないこと。肘のけがで130日を超えて負傷者リストに入っていないこと。松井はこの2年間、負傷者リストに入っておらず、米メディアも権利を使える前提で論じている。

米メディアの予想は割れている。MLB公式サイトのマーク・フェインサンド記者は8月29日、松井は今オフ市場に出る救援左腕で「上位5人に入る」とも言えるとし、権利を使っても驚かないと書いた。

ESPNのジェフ・パッサン記者は9月10日、松井は残留すると予想した。ただし「五分五分で、わずかに残留寄り」という見立てだ。MLBトレードルーマーズも10月7日の記事で、残る可能性のほうが高いとみている。市場に出ても、残りの契約と同じくらいの条件になるという見立てだ。

フェインサンド記者も、トレードルーマーズも、弱点として四球の多さを挙げている。市場が四球の多さより防御率1.83を重く見るか。それが、2年1350万ドルを捨てて出るか、残るかを分ける。

松井は10月30日に31歳になる。残れば、来季の年俸は650万ドル(約10億円)。パドレスで4年目を迎える。

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この記事の数字について(出典・集計方法)
  • 今季の成績は MLB Stats API のレギュラーシーズン(gameType=R)、ポストシーズンはワイルドカードシリーズ(gameType=F)と地区シリーズ(gameType=D)を別々に集計し、ポストシーズン全体(gameType=P)の数字と一致することを確かめた(10月9日取得)。地区シリーズ第4戦は gamePk 849827。ポストシーズン5試合の内訳は、ワイルドカードシリーズ1試合(1回)と地区シリーズ4試合(3回2/3)で、失点1は自責点にならない得点。
  • 救援投手の防御率の順位は、2026年のメジャー全投手のうち、先発0試合(救援だけ)で50回以上を投げた87人で比べた(ナ・リーグ40人、左投手24人)。ナ・リーグ2位はジョアン・デュラン(フィリーズ)の1.82、1位はパドレスのメイソン・ミラーの1.67。
  • 日本人のシーズン比較は、当サイトの日本人メジャーリーガー一覧の年度別成績(yearByYear)から、先発0試合・50回以上のシーズン(41シーズン)を数えた。投手の左右は MLB Stats API の登録(pitchHand)による。
  • 左右打者別の成績は MLB Stats API の対左・対右の成績(sitCodes=vl,vr)による。2026年は対左135人・対右125人、2025年は対左114人・対右158人。
  • 球種、球速、縦の変化量、打球速度は Baseball Savant の1球データ(レギュラーシーズンのみ、2025年1073球・2026年1086球。2026年は MLB Stats API の投球数と一致し、2025年は API の1063球と10球ずれる)を集計した。球種の分類は Statcast の判定による。速度はマイル、変化量はインチで記録されており、キロ・センチに換算した(1マイル=1.609344キロ、1インチ=2.54センチ)。平均球速はスライダーが86.6→84.9マイル、直球が92.1→92.0マイル。直球との差は、丸める前の平均球速の差(5.44→7.05マイル)を換算した。縦の変化量はスライダーが6.9→2.9インチ。
  • 「強い打球」は打球速度95マイル(152.9キロ)以上。空振りの割合は、スイングに対する空振りの割合。スライダーの被打率は、スライダーで打席が終わった打数(四死球・犠打飛と、途中で打ち切られた打席を除く)で数えた。
  • 「打球が安打になる割合」は BABIP(本塁打を除くインプレー打球の安打率)。
  • スライダーが打ちにくくなった理由は、計測値からの推論で、打者や球団に確かめたものではない。他の投手と並べた検証もしていない。
  • 契約の内訳と条件は TSN の記事(2024年1月2日、カナディアン・プレス配信)と MLBトレードルーマーズの Details On Yuki Matsui's Contract With Padres(2024年1月2日)による。契約日(2023年12月23日)と、2024〜25年に負傷者リスト入りがないことは、MLB Stats API の登録記録で確かめた。今春の負傷者リスト入り(3月25日、左鼠径部の張り)は条件の対象外の期間。WBC辞退はベースボール・ネット(2月26日の侍ジャパンの発表)による。
  • 予想は、フェインサンド記者の 27 opt-out and option decisions that will make waves in free agency(MLB.com、8月29日)、パッサン記者の Early MLB free agency intel(ESPN、9月10日)、MLBトレードルーマーズの Previewing The Lefty Relief Class(10月7日、アンソニー・フランコ記者)による。いずれも報道・予想で、当サイトが取材したものではない。
  • 円は三菱UFJ銀行の対顧客電信仲値で換算した。残りの契約は2026年10月8日の1ドル=157.95円、契約時の総額は2023年12月22日の1ドル=142.34円。

数字はすべて MLB Stats API ほかの実データです。データの出典と方針