ドジャースのデーブ・ロバーツ監督は25日(日本時間26日)、敵地ブレーブス戦の前に取材に応じ、大谷翔平の復帰登板が30日(同31日)のタイガース戦になる可能性に言及した。「可能性はある。今週彼がいい状態で過ごせるかどうかだ」。ドジャースは28日からデトロイトで3連戦を戦う。その最終戦である。
大谷が最後に投げたのは7月3日、本拠地でのパドレス戦だった。6回7安打3失点、9奪三振、110球。そこから8週近く、投手・大谷はマウンドから消えている。左膝の状態を優先して7月23日の登板を回避し、その後のブルペンでも違和感が出たと報じられていた。この間も打者としては出続け、8月26日のブレーブス戦にも5打数2安打で出場している。
中断した時点の成績は、14登板で8勝2敗、防御率1.79。80回以上を投げ、10試合以上に先発した142人の中で、2位に立っている。二刀流でこの数字を出している投手が、7月3日を最後にマウンドへ上がっていない。
ただ、この1.79は、エンゼルス時代の大谷が作っていた数字とは中身が違う。三振で押し切る投手ではなくなっているのだ。
142人中、防御率2位、被打率3位、被本塁打率2位
まず今季14登板の中身を並べる。85回2/3を投げて被安打55、自責点17、与四球26、奪三振95。被本塁打はわずか4本で、WHIPは0.95である。
自責点0で降板した登板が6試合あった。この6試合には入らないが、5月27日のロッキーズ戦も6回を無安打に抑えている(4四球、1失点)。最も短い登板でも5回、最多球数は最後の110球。最も打たれた試合でも4失点で、大きく崩れた登板は1つも無い。
80回以上・10先発以上という条件で142人を並べると、大谷の位置はこうなる。
| 指標 | 大谷 | 142人中の順位 | 1位 |
|---|---|---|---|
| 防御率 | 1.79 | 2位 | ジェイコブ・ミシオロウスキー 1.68 |
| 被打率 | .180 | 3位 | ミシオロウスキー .152 |
| 被本塁打率 | 0.42 | 2位 | マックス・フリード 0.21 |
| 奪三振率 | 27.9% | 16位 | ミシオロウスキー 39.3% |
打たれない指標では軒並み上位3人に入っている。ところが奪三振率だけが16位。上位1割ではあるが、他の3つとの落差ははっきりしている。ここが、これまでの大谷と違うところだ。
三振は、エンゼルス時代より減っている
奪三振率(K%)は、対戦した打者のうち何割を三振に仕留めたかを示す。奪三振数や、9イニングあたりに換算するK/9と違い、走者を出した数に左右されない。投手の三振力を年度をまたいで比べるなら、この数字がいちばん素直だ。
年度ごとに並べると、今季の位置がはっきりする。
| 年 | 球団 | 投球回 | 防御率 | 奪三振率 | 被打率 | 被本塁打率 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 2018 | エンゼルス | 51回2/3 | 3.31 | 29.9% | .203 | 1.05 |
| 2021 | エンゼルス | 130回1/3 | 3.18 | 29.3% | .207 | 1.04 |
| 2022 | エンゼルス | 166回 | 2.33 | 33.2% | .203 | 0.76 |
| 2023 | エンゼルス | 132回 | 3.14 | 31.5% | .184 | 1.23 |
| 2025 | ドジャース | 47回 | 2.87 | 33.0% | .227 | 0.57 |
| 2026 | ドジャース | 85回2/3 | 1.79 | 27.9% | .180 | 0.42 |
防御率、被打率、被本塁打率は、いずれもキャリアで最も良い。その一方で、奪三振率だけが最も低い。自己最高だった2022年の33.2%からは、5.3ポイント落ちている。
しかも、落ちたのはここ1年である。1年のブランクを挟んで47回を投げた2025年は33.0%で、2022年とほとんど変わらなかった。そこから今季までのわずか1年で、5.1ポイント下がっている。
三振が減れば、打球は増える。ところが今季は、その増えた打球の中身のほうが変わっていた。
打球の速さは、まったく変わっていない
Statcastは打たれた1球ごとに、打球の速度と角度を計測している。まず速度から見る。
今季の被打球の平均は140.7キロ。2022年は140.2キロ、2023年は139.0キロだった。ほとんど動いていない。というより、この3年ではいちばん速い。強く打たれた打球(時速152.9キロ以上)の割合も、2022年の33.2%に対して今季は33.8%で、わずかに増えている。
つまり、大谷は打者に「弱く当てさせている」わけではない。バットには、これまでと同じ強さで当たっている。
変わったのは、角度だった
| 年 | 球団 | 打球数 | 平均打球速度 | 平均打球角度 | ゴロ率 | フライ率 | バレル率 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 2018 | エンゼルス | 125 | 140.0キロ | 16.0度 | 40.0% | 24.0% | 4.8% |
| 2021 | エンゼルス | 323 | 142.3キロ | 11.7度 | 46.4% | 23.8% | 7.1% |
| 2022 | エンゼルス | 394 | 140.2キロ | 14.5度 | 41.9% | 26.6% | 6.3% |
| 2023 | エンゼルス | 297 | 139.0キロ | 11.5度 | 45.8% | 25.6% | 10.1% |
| 2025 | ドジャース | 117 | 139.0キロ | 13.6度 | 41.9% | 26.5% | 3.4% |
| 2026 | ドジャース | 213 | 140.7キロ | 11.2度 | 52.1% | 20.2% | 3.8% |
平均打球角度11.2度は、計測が残る全シーズンで最も低い。ただし2023年の11.5度、2021年の11.7度との差はわずかで、角度そのものは前からこの水準にあった。
はっきり動いたのは、ゴロの割合のほうである。 52.1%はキャリアで初めての5割超えで、2番目に高い2021年の46.4%を5.7ポイント引き離している。逆にフライは20.2%まで減った。同じ速さで飛んでいる打球が、上がらなくなっている。
被本塁打4本は、そのフライの減少と重なる位置にある。
ただし、ここで自分の表に釘を刺しておきたい。長打になる打球が減ったのは、今季からではない。 ドジャース1年目の2025年、47回を投げた時点でバレル率はすでに3.4%まで落ちていた。エンゼルス最終年の10.1%から3分の1である。
その2025年は、平均打球角度13.6度でゴロ率41.9%。打球そのものは、まだ上がっていた。今季あらためて起きたのは、ゴロが5割を超えたことのほうだ。
バレル率はむしろ3.4%から3.8%へわずかに上がっている。角度が下がって減ったのはフライであって、長打になる当たりの割合そのものではない。
速球中心の投手に、なっている
なぜ打球が上がらなくなったのか。球種の使い方が、エンゼルス時代とは別物になっている。
| 年 | 4シーム | スイーパー | カーブ | スプリット | カッター | シンカー | スライダー |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 2022 | 27.3% | 37.4% | 8.4% | 11.9% | 8.9% | 3.7% | 2.4% |
| 2023 | 32.9% | 35.0% | 3.7% | 5.8% | 12.2% | 6.5% | 3.9% |
| 2025 | 38.8% | 22.8% | 8.8% | 4.6% | 6.6% | 7.0% | 11.3% |
| 2026 | 45.1% | 29.4% | 10.0% | 8.5% | 0.7% | 5.2% | 1.1% |
2022年の大谷は、スイーパーを37.4%投げる変化球主体の投手だった。4シームは4球に1球強にすぎない。それが今季は逆転し、4シームが45.1%で最多になっている。減った分はスイーパー(37.4%→29.4%)とカッター(8.9%→0.7%)でほぼ半々。加えて、昨季11.3%まで増やしていたスライダーが1.1%まで消えた。
そして、その4シーム自体が変わっている。
| 年 | 割合 | 平均球速 | 平均回転数 | 空振り率 | ゴロ率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 2022 | 27.3% | 156.5キロ | 2218回転 | 20.7% | 48% |
| 2023 | 32.9% | 155.8キロ | 2259回転 | 27.0% | 43% |
| 2025 | 38.8% | 158.4キロ | 2467回転 | 24.7% | 42% |
| 2026 | 45.1% | 157.8キロ | 2488回転 | 26.9% | 52% |
球速はエンゼルス時代より1キロ強上がった。回転数は毎分270回転増えている。そして、この4シームを打たれたときのゴロ率が52%。2022年の48%も2023年の43%も上回り、計測が残る中で最も高い。
投球の半分近くを占める球が、当てられてもゴロになる。これが今季の投球の骨格だ。
誰もが思いつくのは「三振が減ったのは球威が落ちたからだ」という説明だろうが、4シームに限れば数字はその逆を指している。空振り率は2022年の20.7%から26.9%まで上がり、エンゼルス最終年の27.0%とほぼ並んだ。球速も回転数も、当時より落ちてはいない。
ゴロが増えたのは、速球だけの話でもない。スイーパーの空振り率は2022年の38.1%に対して今季37.7%とほとんど動かないまま、打たれたときのゴロ率だけが29%から43%へ上がっている。球が悪くなったのではなく、投球全体の設計が三振を追わなくなったと考えるほうが素直である。
もっとも、これは当サイトの推論であって、大谷本人や首脳陣がそう説明したわけではない。
都合の悪い数字も、置いておく
被打率.180は、この投球内容だけで説明しきれるものではない。
Statcastは、打たれた打球の速度と角度から「本来どれくらいの打率になるはずだったか」を計算した期待被打率を出している。年ごとに並べると、こうなる。
| 年 | 期待被打率 | 実際の被打率 | 差 |
|---|---|---|---|
| 2022 | .202 | .203 | +.001 |
| 2023 | .201 | .184 | −.017 |
| 2026 | .201 | .180 | −.021 |
期待被打率は3年間、まったく動いていない。 .202、.201、.201である。打球の質から計算するかぎり、大谷の「打たれ方」はエンゼルス時代と同じ水準にある。
下がっているのは、実際の被打率のほうだけだ。.203から.184、そして今季の.180。期待値との差は21ポイントに広がっている。この21ポイントは、守備に助けられた分と、単純に運が良かった分である。
角度が下がってフライが減ったぶんは、被打率ではなく本塁打のほうに効いている。被本塁打率0.42はキャリアで最も低い。ゴロを打たせる投球が買ったのは、安打を減らすことではなく、長打を消すことだった。
全投球で見た空振り率も、正直に置いておく。2022年の33.1%に対して今季は30.4%で、こちらは下がっている。上がっているのは4シーム単体の空振り率であって、投球全体ではない。
四球も増えた。今季の与四球率は7.6%で、4.8%だった昨季から1.5倍以上に上がり、エンゼルス時代でいちばん少なかった2022年の6.7%も上回っている。それでもWHIPが0.95で収まっているのは、被安打がそれ以上に減っているからだ。
8週間ぶりのマウンドで、同じ数字がそのまま続く保証はどこにもない。
8週間で、何が戻り、何が戻らないのか
ドジャースは80勝53敗で、レギュラーシーズンは残り29試合。規定投球回の162回には76回1/3足りず、大谷が防御率のタイトル争いに顔を出す道は今季すでに閉じている。
それでも、9月に戻ってくる意味は小さくない。この投手はポストシーズンで投げる可能性があり、そのときに必要なのは通年の資格ではなく、1試合を抑える力だからだ。
戻ってきた大谷が、7月3日までと同じ形で投げられるのかどうか。8週のブランクで最初に鈍るのが制球なのか、球速なのか、それとも打球を上げさせない何かなのかは、まだ誰にもわからない。30日のデトロイトで投げれば、答えの一部が出る。
この記事の数字について
- 出典はMLB公式のStats APIとBaseball Savant。2026年8月26日(現地時間)終了時点で取得した。シーズン進行中のため変動する
- 成績はすべてレギュラーシーズンのもの。ポストシーズンとオープン戦は含んでいない
- 2020年の投球成績(2試合・1回2/3)は母数が小さすぎるため、年度別の表から除いている。2019年と2024年は登板が無い
- 「奪三振率」は本記事では対戦打者に占める三振の割合(K%)を指す。奪三振数を投球回で割ったK/9とは別の指標で、走者を出した数に左右されない。当サイトの別記事では、同じ語をK/9の意味で使っている場合がある
- 「被本塁打率」は9イニングあたりの被本塁打数(HR/9)
- MLB内の順位は、2026年に80回以上を投げ、かつ10試合以上に先発した142投手を母集団とした。規定投球回(162回)を満たす母集団ではない
- 「バレル」はStatcastの区分で、打球速度と角度の組み合わせが統計上もっとも長打になりやすい領域に入った打球を指す。原データの
launch_speed_angleが6の打球を数えた。バレル率は打球全体に占める割合 - 「強く打たれた打球」はStatcastの95マイル以上の区分を換算した、時速152.9キロ以上の打球
- 打球速度・打球角度・ゴロ率・フライ率・バレル率は、Baseball Savant のリーダーボードの公表値。母数は2018年125、2021年323、2022年394、2023年297、2025年117、2026年213で、2025年はとくに少ない。バントは平均から除外されている(Savantの集計に合わせた。含めると打球速度が最大で1キロ以上低く出る)
- 「期待被打率」はBaseball Savant の
est_ba(xBA)。打球の速度と角度から1球ずつ安打になる確率を出し、三振を0として全打数で割ったもの。守備・球場・走力の影響を受けないので、実際の被打率と同じ分母で比べられる。インプレーになった打球だけを平均した値(今季.292)とは別物で、そちらを実際の被打率と並べても意味を持たない - 球種の割合と球速・回転数・空振り率は、Statcastの1球ごとのデータから集計した。空振り率は、スイングした球のうち空振りになった割合。スイングにはファウルと打球になった球を含む
- 「自責点0で降板した登板が6試合」は自責点で数えたもの。失点0だった登板は5試合で、差の1試合は4月8日のブルージェイズ戦(1失点・自責点0)。本文で触れた5月27日のロッキーズ戦は失点1・自責点1で、どちらにも入らない
- 「与四球率」は対戦打者に占める四球の割合(BB%)。今季は340打者に対して26四球
- 4シームのゴロ率の母数は、2022年130、2023年91、2025年43、2026年109の打球。スイーパーは2022年150、2026年53
- 球種別の投球数はStats APIの総投球数とわずかに食い違うことがある
- 原データの球速と打球速度はマイル毎時。本記事ではキロメートル毎時に換算した。打球角度は度、回転数は毎分の回転数をそのまま使っている
- ロバーツ監督の発言と復帰登板の見通しは報道によるもので、当サイトが取材したものではない。ドジャースが8月28日から30日までデトロイトでタイガースと3連戦を戦うことはMLB公式の日程で確認した
- 「投球全体の設計が三振を追わなくなった」は当サイトの推論である。球種の割合・球速・回転数・打球の角度はデータに出ているが、それが意図的な変更なのか、身体の変化によるものなのかは、データからは特定できない
- 7月3日以降に登板がない理由は、左膝の状態によるものと報じられている(MLB.com)。当サイトも8月3日の記事で同じ経緯を伝えた。MLB公式の記録上では、Stats APIに故障者リスト入りの登録は無く、この間も打者として出場を続けている
- スイーパーとスライダーは、Statcast上で別の球種として集計されている
