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ニュース2026-09-04クロウ=アームストロング大谷翔平MVPWARセイバーメトリクスカブスドジャース守備指標MLB

大谷とのMVP差が1.8倍に PCAは振る球を絞った

大谷とのMVP差が1.8倍に PCAは振る球を絞った

8月22日、当サイトが大谷翔平とピート・クロウ=アームストロングのMVP争いを並べたとき、総合貢献度fWARの差は1.37だった。それが12日で2.51に開いている。1.8倍である。しかも当時ほぼ互角だった打撃の生産力で、いまクロウ=アームストロングが13.5ポイント上回る。この24歳が今年になって最も大きく変えたのは、ボール球を振る率だった。45.6%から35.3%へ。2年続けて300打席以上に立った182人の中で、減少幅は2位を4.7ポイント引き離した1位である。一方で守備は去年と同じOAA24のまま、MLB1位タイ。そして40本塁打40盗塁まで、あと1本と8個のところにいる。

Baseball Archives 編集部2026-09-04データ出典 MLB Stats API

9月3日、リグレー・フィールド。カブスのピート・クロウ=アームストロング(PCA)がブルワーズ戦で39号2ランを叩き込んだ。24歳の中堅手はこれで39本塁打32盗塁。今季MLBで30本塁打30盗塁に到達したのは、この男ひとりである。

その前日には、ドジャースのロバーツ監督が大谷翔平の今季中の投手復帰を断念する可能性に触れていた。「それも選択肢の一つ。まだそこまでの話はしていないが、確かに選択肢にはある」。大谷が最後にマウンドに立ったのは7月3日。2か月が過ぎている。

当サイトがこの2人のMVP争いを並べたのは8月22日だった。そのとき総合貢献度を表すfWARは大谷7.06、クロウ=アームストロング8.43。差は1.37である。いま、その差は2.51になっている。

12日で、1.8倍に開いた。

片方は7本打ち、片方は0本だった

8月22日以降の2人を並べる。

8月22日以降 大谷翔平 クロウ=アームストロング
試合 10 12
打数 39 52
安打 5 15
打率 .128 .288
本塁打 0 7
打点 0 13
三振 16 12

三振の数も対照的だ。大谷は39打数で16、クロウ=アームストロングは52打数で12。打数の多いほうが、三振は少ない。

大谷の最後の本塁打は8月18日。本塁打が止まってから数えると、12試合46打数6安打で打点はゼロである。一方のクロウ=アームストロングは、8月以降の31試合で15本を放っている。

そして大谷の投手としてのfWARは、7月3日を最後に2.93で頭打ちになった。登板がなければ、投手の貢献は1グラムも増えない。

打撃でも、追い抜かれた

8月22日の記事で書いたのは「打撃の生産力はほぼ同じ。差の8割は守備とポジション補正でついている」だった。その前提が崩れている。

wRC+ 8月22日 9月2日終了時点
大谷 152.3 143.4
クロウ=アームストロング 154.2 156.9
1.9 13.5

球場と時代を補正した打撃生産力wRC+で、13.5ポイントの開き。クロウ=アームストロングは本塁打でMLB2位、OPSでもMLB2位につけている。守備と足で稼ぐ選手が、打撃でもリーグの最上位に並んだ。

fWARの内訳はこうなっている。表の上4行はリーグ平均を基準にした得点で、そこに控え選手との差とリーグ調整を足した合計を勝利数に換算したものがfWARである。この表では約9.8点が1勝にあたる。

fWARの内訳 大谷 クロウ=アームストロング
打撃(リーグ平均比) 31.0 43.0
走塁(同) 1.7 5.7
守備(同) ―(指名打者) +20.9
ポジション補正 −13.8 +1.6
控え選手比の加算 +18.0 +19.1
リーグ調整 +1.2 +1.3
合計(得点) 38.1 91.5
打者fWAR 3.88 9.32
投手fWAR 2.93
総合fWAR 6.81 9.32

大谷は指名打者であるがゆえに、守備で0、ポジション補正で13.8点のマイナスを背負う。この換算率でいえば、およそ1.4勝ぶんのハンデだ。それを投手として2.93勝積み上げて埋め、それでもなお、2.51足りない。

去年から大きく動いたのは、打つ球の選び方だ

では、去年31本塁打を打ちながらOPS.768にとどまっていた打者が、なぜ一年でMLB2位のOPSまで来たのか。3年ぶんの計測データを並べると、動いた項目と動かなかった項目がきれいに分かれる。

2024 2025 2026
ボール球を振る率 43.5% 45.6% 35.3%
四球率 5.1% 4.5% 11.6%
出塁率 .286 .287 .375
空振り率 15.8% 16.0% 12.0%
強い打球の割合 36.8% 41.6% 48.7%
バットスピード 113.6キロ 117.0キロ 120.5キロ
フライの割合 42.5% 49.7% 49.6%
引っ張りの割合 43.5% 52.9% 51.3%
打球角度 17.2度 20.0度 21.9度
wRC+ 86.3 109.3 156.9

打球の角度と方向は、去年のままだ。 フライの割合は49.7%から49.6%、引っ張りの割合は52.9%から51.3%、打球角度が動いたのも1.9度にすぎない。2024年から2025年にかけて起きた「上げて引っ張る」への改造は、去年のうちに終わっている。

今年になって大きく動いたのが、ボール球を振る率である。45.6%から35.3%へ、10.3ポイントの下落。四球率は2.6倍になり、出塁率は8分8厘も跳ね上がった。

これがどれくらい異常なのか。2025年と2026年の両方で300打席以上に立った182人を並べると、こうなる。

ボール球を振る率 2025 2026 減少幅
1. クロウ=アームストロング 45.6% 35.3% −10.3pt
2. ライリー・グリーン 34.2% 28.5% −5.6pt
3. テイラー・ワード 23.4% 18.0% −5.4pt
4. コナー・ノービー 35.4% 30.6% −4.8pt
5. ジャクソン・チョウリオ 40.6% 35.9% −4.7pt

2位に4.7ポイントの差をつけている。 ただし、35.3%という水準そのものが低いわけではなく、2026年の絶対値ではワードもグリーンもノービーもクロウ=アームストロングより下にいる。異常なのは水準ではなく、1年で動いた幅のほうだ。 182人の分布の中で、これは変化というより別人である。

もっとも、これで因果が証明されたわけではない。選球が良くなった年に打撃も良くなった、というのは同時に起きた事実であって、どちらが先かまでは1球ごとのデータからは出てこない。同じ期間にバットスピードも117.0キロから120.5キロへ3.5キロ速くなっており、こちらは選球とは別の変化だ。強い打球の割合が41.6%から48.7%へ上がったのは、振る球を絞ったことと、振る速さが上がったことの両方が効いているとみるのが自然だろう。

そして、この見立てには都合の悪い事実がふたつある。ひとつは三振率が24.0%から26.3%に増えていること。全投球に占める空振りの割合は16.0%から12.0%へ下がっているが、これはスイングそのものを減らした分が効いた数字で、バットに当たりやすくなった証拠にはならない。振る球を絞れば、そのぶん見逃したまま追い込まれる打席は増える。三振の増加は、選球を突き詰めたことの裏側とみるのが自然だ。もうひとつは、打球の質から算出される期待wOBAが.367なのに対し、実際のwOBAは.400あることだ。中身以上に結果が出ている部分は、確実にある。

守備はMLB1位タイ だが、これは去年からだ

打撃が変わった一方で、守備は去年と同じ高さのまま動いていない。正確には、去年より17試合少ない出場で、去年と同じ数字に届いている。

守備指標OAA(平均的な野手に比べて何アウト多く取ったか)で、クロウ=アームストロングは24。規定を満たした267人の中で1位タイである。並んだのはロイヤルズの遊撃手ボビー・ウィットJr.。同じ24でも、防いだ失点はウィットの18に対してクロウ=アームストロングが22で上回る。中堅手の2位はレッドソックスのラファエラで15だから、同じポジションの中では隔絶している。

打球を捕った割合は96%。打球までの距離と到達までの時間から算出される期待値は89%だから、7ポイント上回っている。

面白いのは、その24の内訳だ。

OAAの方向別内訳
三塁線側へ横 11
一塁線側へ横 10
前へ 2
後ろへ 2

(方向別は端数処理のため単純合計が25になるが、公表値は24)

24のうち21が、横方向で稼いだアウトである。

そして彼のスプリントスピードは秒速9.0メートル。計測された547人の中で24位と十分に速いが、上位1%ではない。MLB1位タイの守備は、足の速さだけでは説明がつかない。 差を生んでいるのは最高速度ではなく、打球が上がった瞬間にどちらへ走り出すか、その判断のほうだろう。

なお、OAAが公開されている2016年以降で中堅手の数字を並べると、彼の24は2017年のバイロン・バクストン(26)に次ぐ2位タイ。しかも並んだ相手は、去年の彼自身である。守備の傑出は、今年始まったことではない。

同じことをやった選手はいる ここまでやった選手はいない

打つ・走る・守るを同時にこの水準でやった選手が過去にいたのか。2016年以降で「35本塁打以上かつOAA10以上」を満たしたシーズンを全部抜き出すと、13例が該当した。

選手 守備位置 本塁打 盗塁 OAA
2026 クロウ=アームストロング 中堅 39 32 24
2019 ノーラン・アレナド 三塁 41 3 22
2018 フランシスコ・リンドーア 遊撃 38 25 21
2016 ノーラン・アレナド 三塁 41 2 19
2019 トレバー・ストーリー 遊撃 35 23 18
2019 マット・チャップマン 三塁 36 1 15
2022 クリスチャン・ウォーカー 一塁 36 2 14
2018 ノーラン・アレナド 三塁 38 2 12
2023 ルイス・ロバートJr. 中堅 38 20 12
2017 ノーラン・アレナド 三塁 37 3 11
2017 アーロン・ジャッジ 右翼 52 9 11
2016 ロビンソン・カノー 二塁 39 0 10
2019 ジョシュ・ドナルドソン 三塁 37 4 10

この13例の中で、OAAが最も高いのがクロウ=アームストロングの今季である。 そして彼以外に30盗塁を超えた選手はいない。

条件を変えて「30本塁打・30盗塁・OAA10以上」で切ると9例。うち2つが彼の2025年と2026年で、残る7例のOAAは最高でも16(2024年のボビー・ウィットJr.)だった。組み合わせに前例がないのではない。水準に前例がない。

40-40の扉と、大谷に残された23試合

39号が出た9月3日の一戦を終えると、カブスに残るのは21試合になる。クロウ=アームストロングは40本塁打まであと1本、40盗塁まで8個のところにいる。本塁打はほぼ手中だろう。問題は盗塁のほうだ。

今季通算のペースなら、残り21試合でおよそ5個。だが8月22日以降の12試合で盗んだのは1個だけである。本塁打を狙いに行ったこの12試合で、足のほうは止まっていた。

40本塁打40盗塁は、記録の揃う1920年以降で6人しか達成していない。

選手 成績 主な守備位置
1988 ホセ・カンセコ 42本40盗 右翼
1996 バリー・ボンズ 42本40盗 左翼
1998 アレックス・ロドリゲス 42本46盗 遊撃
2006 アルフォンソ・ソリアーノ 46本41盗 左翼
2023 ロナルド・アクーニャJr. 41本73盗 右翼
2024 大谷翔平 54本59盗 指名打者

主戦場が中堅の選手はひとりもいない。 そして最後にこの扉をくぐったのが、ほかならぬ大谷だった。

大谷に残されているのは23試合。埋めるべき差は2.51で、いま使える手段は事実上、打撃だけである。ロバーツ監督が触れた今季中の投手復帰の断念について、決定の期限は切られていない。仮に戻れたとしても、今季の大谷は14先発で2.93。1先発あたり0.21である。2.51を埋めるには、12先発いる。

4年連続5度目のMVPが、数字の上で消えたわけではない。ただ、8月22日に1.37だった差は、いま2.51になっている。縮める材料のほうが先に減っているという一点だけが、はっきりしている。


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