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ニュース2026-08-28村上宗隆ホワイトソックス打率OPS三振StatcastMLB

村上宗隆の打率.219はなぜか 打球の強さはMLB1位

村上宗隆の打率.219はなぜか 打球の強さはMLB1位

ホワイトソックスの村上宗隆が8月に入って打率.144と沈んでいる。24試合107打席で41三振。それでもシーズンのOPSは.860で、規定打席に到達した138人の中で18位に残っている。1球ごとの計測データを開くと、村上は空振り率42.0%でMLB1位、強く打った打球の割合58.2%でもMLB1位に立っていた。この2つを同時に取った打者は、Statcastが公開された2015年から2025年までの11シーズンに一人もいない。このままシーズンが終われば、村上が最初になる。そして打率が上がらない理由は、ライナーの割合にありそうだ。

Baseball Archives 編集部2026-08-28データ出典 MLB Stats API

8月26日(日本時間27日)、本拠地でのレンジャーズ戦。ホワイトソックスの村上宗隆は、5つの打席をこう終えた。1回に併殺打、2回に空振り三振、4回に四球、6回に四球、そして8回に見逃し三振。3打数無安打2三振、四球2つである。

8月の村上は、この形をひと月続けている。24試合で107打席に立ち、打率.144。三振41、四球16、本塁打5。打率も三振の数も、今季の月別では最も悪い。

それでいて、シーズン成績はまだ崩れていない。98試合429打席で打率.219、出塁率.357、長打率.503、本塁打29本。OPSは.860で、規定打席に到達した138人の中で18位に立っている。長打率は15位。落ちているのは打率だけだ。

打率2割1分台でOPS.850を超えている打者は、規定に到達した138人の中で村上ひとりである。次に打率が低いのはカイル・シュワーバーの.243で、2分以上離れている。ではこの打者に何が起きているのか。答えを先に言えば、村上は正反対の2つの指標で、どちらもMLBの1位に立っている。

振っているのは、ストライクだ

まず三振の側から見る。Statcastは1球ごとに、打者が振ったかどうか、当たったかどうかを記録している。

村上の空振り率は42.0%。規定打席に到達した138人の中で1位である。2位はコルソン・モンゴメリーの37.6%で、4ポイント以上の差がついている。リーグ平均は23.9%だから、平均の1.7倍を超える頻度で空振りしている計算になる。振った球の5球に2球が空を切る打者、と言い換えてもいい。

ここまでは、三振率33.8%(MLB2位)から想像できる通りだ。ところが次の数字が、その想像を裏切る。

ボール球を振った割合は21.9%で、リーグ平均の30.2%を大きく下回る。138人の中では低いほうから14位。ゾーンの外に投げても、村上はあまり手を出さない。四球率17.2%がMLB3位まで伸びているのは、ここが効いている。

つまり村上は、ボール球に釣られて三振しているのではない。振っているのはストライクだ。それでも当たらない。

その当たらなさが、いちばんはっきり出る数字がある。ストライクゾーン内の球を振ったとき、バットに当たる割合は67.7%。これは138人の最下位である。リーグ平均は84.7%。低いほうから2番目のニック・カーツでも73.0%あるから、村上だけが5ポイント以上離れて底にいる。ストライクを振って、3球に1球は空振りしている。

指標 村上 138人中の順位 リーグ平均
空振り率 42.0% 1位 23.9%
ゾーン内コンタクト率 67.7% 最下位 84.7%
ボール球スイング率 21.9% 低いほうから14位 30.2%
三振率 33.8% 2位 20.7%
四球率 17.2% 3位 9.6%

当たれば、MLBで最も強い

では、当たったときはどうか。ここが村上のもう一方の顔である。

強く打った打球の割合は58.2%で、これも138人の1位だ。Statcastは打球速度が時速152.9キロ以上のものを「強い打球」と分類している。村上は打球の6割近くを、この領域に入れている。2位はジェームズ・ウッドの57.6%、3位はカーツの57.3%。リーグ平均は40.7%である。

平均打球速度は151.3キロで、138人中4位。1位ウッドの153.0キロとの差は1.7キロしかない。リーグ平均は143.8キロだから、村上は7キロ以上速い打球を打ち返し続けていることになる。今季の最速は183.6キロだった。

長打になりやすい角度と速度の組み合わせに入った打球を「バレル」と呼ぶ。村上のバレル率は19.7%で、138人中2位。リーグ平均は8.8%だから、平均の2.2倍である。1位ウッドの20.8%との差は1.1ポイントしかない。

指標 村上 138人中の順位 リーグ平均
強い打球の割合 58.2% 1位 40.7%
バレル率 19.7% 2位 8.8%
平均打球速度 151.3キロ 4位 143.8キロ

138人の中で、空振り率1位。強い打球の割合でも1位。この2つは、普通は同じ打者の中に同居しない。

11年間、誰もいなかった

どれくらい同居しないのか。Statcastのデータが公開されている2015年から今季までの12シーズンについて、規定打席到達者の中で空振り率1位だった打者と、強い打球の割合1位だった打者を並べてみた。

2015年はジョク・ピーダーソンとミゲル・カブレラ。2017年はジョーイ・ギャロとアーロン・ジャッジ。2020年はケストン・ヒウラとフェルナンド・タティスJr.。2024年はザック・ゲロフとジャッジ。2015年から2025年までの11シーズンは、一度の例外もなく別人だった。同じ打者が2つの1位を同時に持っているのは、12シーズン目の2026年、村上が初めてである。

条件を緩めても、この組み合わせは滅多に出てこない。空振り率36%以上かつ強い打球の割合52%以上という枠に入ったシーズンは、12年間で6回しかない。2017年のギャロ、2020年のミゲル・サノー、同年のエヴァン・ホワイト、2021年のサノー、そして今季の村上とカーツである。

ただし、この6回は横並びではない。2020年の2人は60試合の短縮シーズンで、200打席そこそこしか立っていない。今季の2人は、まだシーズンの途中である。 162試合を走りきったうえでこの枠に入ったのは、2017年のギャロと2021年のサノーの2人だけだ。

中でも近いのが、2017年のギャロだ。空振り率43.4%、強い打球の割合52.2%、打率.209でOPS.870。数字の形が村上とよく似ている。ギャロはこの年、145試合で41本塁打を放ちながら、打率は2割1分に届かなかった。

ただし村上のほうが、打球は強い。ギャロの52.2%に対して村上は58.2%。当たったときの破壊力では、村上が上を行っている。

同じ強さで打って、打率が分かれた

ここまでで、三振が多いことも、長打が出ることも説明がついた。残るのは打率である。これだけ強く打っているのに、なぜ.219で止まるのか。

比較に使えるのがカーツだ。強い打球の割合57.3%は村上の58.2%とほぼ同じ。空振り率36.9%も3位で、ゾーン内コンタクト率73.0%は村上に次いで低い。村上と同じ枠にいる打者である。ところがカーツの打率は.256で、村上より3分7厘高い。

2人を分けているのは、打球の種類だった。村上のライナーの割合は14.9%で、138人の最下位である。リーグ平均は24.0%、カーツは26.1%。9ポイント以上少ない。

その分は、フライに移っている。村上のフライ38.0%は138人中3位の高さで、リーグ平均の27.7%を10ポイント上回る。一方でゴロ42.3%は、平均の41.2%とほとんど変わらない。消えたライナーが、そのままフライになっている。

ライナーは、野球のあらゆる打球の中で最も安打になりやすい。フライはスタンドまで届けば本塁打になるが、届かなければ野手のグラブに収まる。ゴロは内野を抜けなければ終わる。ライナーだけが、強く打った分がそのまま安打として返ってくる。

その差は、インプレーになった打球の打率にそのまま出る。村上のBABIPは.268、カーツは.363。リーグ平均は.296である。打球の強さはほぼ同じ、空振りの多さも上位で並ぶ2人だが、打球がライナーにならない村上は、当たった球の2割7分ほどしか安打にできていない。カーツは3割6分を超える。

そしてこの.219は、不運ではない。打球の速度と角度から1球ずつ安打になる確率を積み上げた期待打率(xBA)は.215で、実際の打率.219とほとんど一致している。守備位置や球場の影響を取り除いても、村上の打率はここに落ち着く。

逆に言えば、カーツの.256のほうが借り物である。カーツの期待打率は.243で、実際の打率より1分3厘低い。BABIP.363という高い数字が、その差を埋めている。2人の打率の差3分7厘のうち、期待打率の差で説明がつくのは2分8厘までだ。

指標 村上 ニック・カーツ リーグ平均
打率 .219 .256 .256
期待打率 .215 .243 .254
ライナーの割合 14.9% 26.1% 24.0%
BABIP .268 .363 .296
空振り率 42.0% 36.9% 23.9%
強い打球の割合 58.2% 57.3% 40.7%

8月に崩れたのは、振り方ではない

最後に、冒頭の1か月へ戻る。打率.144。何かが壊れたように見える数字だ。

ところが1球ごとのデータを月ごとに割ると、振り方の側には崩れた形跡が見つからない。空振り率も、ゾーン内でバットに当たる割合も、ボール球に手を出す割合も、8月は通算の数字とほぼ重なる。ゾーン内コンタクト率にいたっては、8月のほうが1ポイント以上良い。

4月 5月 7月 8月 通算
打率 .228 .244 .258 .144 .219
空振り率 44.3% 40.4% 42.9% 41.7% 42.0%
ゾーン内コンタクト率 64.2% 70.5% 63.3% 68.9% 67.7%
ボール球スイング率 20.6% 22.3% 22.2% 21.9% 21.9%
平均打球速度 155.0キロ 149.8キロ 151.9キロ 150.2キロ 151.3キロ
強い打球の割合 64.2% 53.6% 67.6% 51.0% 58.7%
打球数 53 56 37 49 206

※月別の「強い打球の割合」は当サイトの1球データ集計値。通算58.7%が本文の58.2%(Savantの公表値)と違う理由は末尾に記した。

村上は5月30日に右ハムストリングの肉離れで故障者リストに入り、7月10日に復帰するまで35試合を欠場した。表に6月がないのはそのためである。

打率を別にすれば、8月に大きく動いたのは強い打球の割合の行だけだ。7月の67.6%から8月は51.0%へ、16.6ポイント落ちている。ただしこれは今季初めてではない。5月も53.6%まで下がっていて、その月の打率は.244だった。逆に4月は64.2%と今季2番目に高かったが、打率は.228である。しかも比べているのは37打球と49打球で、1試合の当たり損ないが数ポイント動かす母数でしかない。

打率と連動しない指標は、ほかにもある。7月のゾーン内コンタクト率63.3%は今季で最も悪い。それでいて、その月の打率.258は、18打数の3月(.278)を除けば今季で最も良かった。

つまり8月の.144は、振り方が壊れて生まれた数字ではない。空振り率もゾーン内コンタクト率もボール球スイング率も平均打球速度も通算とほぼ同じまま、打率という結果だけが、4月から7月の.228〜.258(3月は.278)の下へ大きく外れた。ただし裏を返せば、戻ってくる先も高くはない。期待打率.215は、村上の打率がおおむねここだと言っている。

ホワイトソックスは70勝63敗でア・リーグ中地区の首位に立ち、残り29試合を戦う。

その29試合で揺れるのは、打率ではない。強い打球の割合は、2位ジェームズ・ウッドの57.6%とわずか0.6ポイント差である。空振り率のほうは2位に4.4ポイントの差をつけていて、まず動かない。

もうひとつ、記録が消える道がある。ここまでの順位はすべて「規定打席に到達した138人の中で」の話だが、村上自身がその138人から外れる可能性が残っている。 規定打席はチームの試合数に比例して上がっていく。133試合を終えた時点の基準は413打席で、村上の429打席との差は16打席しかない。8月に打率.144で沈んでいる打者である。5、6試合スタメンを外れれば、基準のほうが追い越す。

11年間どの打者にも起きなかった2つの1位の同居が記録として残るかどうかは、村上の打球がこの先どれだけ強いままでいられるかと、そもそも打席に立ち続けられるかにかかっている。


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